教育福島0160号(1992年(H04)01月)-049page
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博物館ノート
雪村周継筆叭々鳥図
一幅紙本墨画
雪村周継筆室町時代
縦二三・八cm横 三一・八cm
県立博物館蔵
雪村は戦国期の水墨画家で、関東や東北を舞台に活躍した。著名な雪舟に私淑したといわれ、その画業は雪舟とならび賞される。常陸国(現在の茨城県)の佐竹氏一門出身の彼は、禅宗の僧であるが、各地を遍歴して絵筆を執った。小田原や鎌倉に足跡を残したほか、会津の葦名盛氏のもとでも制作したことが知られている。また晩年は三春に住んで画作を続けるなど、本県にゆかりの深い画人である。
館蔵の叭々鳥図は、墨一色で描かれた小品である。画面左を広くあけ、岩の上の叭々鳥の姿が真横から把えられている。鋭いくちばしや目の醸し出す表情は、簡潔な画面構成と相まって冷徹な空間を作り出している。しかし、その表情の厳しさに、かえってユーモラスな味わいがあって、見る者の心をひきつけてやまない。たっぷりとした濃墨であらわされた鳥の頭部が、強烈な印象を与えているが、岩場に丁寧な点苔を加えるなどしてバランスを整えている。筆者雪村の、個性的で、卓越した感覚がうかがえる作品である。
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