教育福島0161号(1992年(H04)02月)-021page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

先生の赤ちゃん

椎根千鶴子

 

産休前にされた学級活動『先生の赤ちゃん』の授業風景を思い出させてくれた。

 

晩秋のある日、育児休業中のA先生が、初産の赤ちゃんを抱いて学校に来られた。抱かせてもらった生命のみずみずしさが、A先生が産休前にされた学級活動『先生の赤ちゃん』の授業風景を思い出させてくれた。

それより以前に、二人目を出産される一年生担任のB先生に、「産休に入られる前に、性についての参観授業をなさってみられては…。」と話してみたところ、偶然にも、「私もそのつもりで計画を進めているところです。」いう返事がいただけた。

前年度に、本校の保護者を対象に行ったアンケート調査で、『性教育は誰がするのが理想だと思いますか』の問いに、七十五パーセントが「保護者」との回答であった。しかし、いざ保護者が実施することになると、

1) 内容や方法に不安が一杯である。

2) 親子一緒に、性について学べる機会が欲しい。

3) 先生と連携して進めていきたい。

などの意見が数多く寄せられた。

現職教育の時間に報告したこのことを意識しておられて、「おなかに赤ちゃんがいる今の機会に、性についての参観授業をしてみようと計画しました。」とのことであった。

主題の『先生の赤ちゃん』は、資料に使われたVTR教材(北沢杏子編集ふしぎだなシリーズ中の一巻)の題名である。

授業公開の日は、他の先生方にも呼びかけ、保護者と一緒に参観させてもらった。

次から次へと飛び出す子ども達の新鮮な発言。B先生に抱きついて、大きなおなかにじっと耳をあてている子。本物そっくりの赤ちゃん(沐浴指導用の人形)をそっと抱いている子。一年生の子ども達の輝く目、目、目。感動の授業であった。

そして、この授業から約四ヵ月程過ぎた日、四年生担任の若いA先生が、「性の指導に挑戦してみます。」と、資料をあれこれ選んでいかれた。授業の主題はやはり『先生の赤ちゃん』で、資料も同じVTR教材を使用されたが、展開された内容は、まったく異なっていた。しかし、クラスの子ども達全員をすっかり夢中にさせたところは、前の先生と同じだった。「今夜は、お父さんにも参加してもらって、今日の授業の続きをしなくちゃね…」。参観していた母親達の会話である。

事前の綿密な教材研究や調査、適切な資料の選択、子どもとの信頼関係などが、子ども達の目を生き生きと輝かせていたのである。

これらの授業を参観して、性教育は、四年生では遅いが一年生では早すぎるとか五年生では何を教えるかなどの議論よりも、学級の子ども達をどんな子どもに育てたいのか、そのために、何をどのように教えたらよいかという担任の先生の意識が、性教育を実践させる大きな推進力になるのではと感じたのである。

子ども達をとりまいている環境を考えれば、性教育は、好むと好まざるとにかかわらず、避けて通ることはできない。今、「自分やまわりの人達の幸せを同時に願う正しい性」の視点に立ち、担任の先生に性教育に積極的に取り組んでみようとの意欲を持っていただくために、養護教諭の立場としてどのような働きかけをしたらよいか、どんなお手伝いができるのか、『性の指導に対する援助のあり方』について、仲間の養護の先生達とも連携し合って研修を深めていきたいと考えている。

(いわき市立郷ヶ丘小学校養護教諭)

 

ある飼育係の話

山内忠幸

 

次に紹介する話は、東京多摩動物園飼育係のチンパンジーに関するものである。

 

今年はさる年である。昨年あたりから、テレビのCMにトレンチコートを着た、さるの次郎君が登場し、「反省」のポーズで人気を呼んでいる。次に紹介する話は、東京多摩動物園飼育係のチンパンジーに関するものである。

ここのボスは、十八頭の群れを取りしきって、ボスとしての地位を保っているという。たとえば、群れに争い事や、困った事があれば、彼は、事あるごとに、先頭に立ち、これを解決しようとする。また、自分の子であろうとなかろうと、群れの中の

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。