教育福島0161号(1992年(H04)02月)-022page
赤ん坊をとても可愛いがる。夕方、一日一回の、待ちに待った食事で、小屋に入る時も、子供や赤ん坊を抱いたメスざるを、一番先に入らせ、自分は最後に入るという。こうした順序も、ボスが統制している。もし、雨の降る日など、腹はへっているし、ぬれるのが厭で、ボスが、先に小屋に入ろうものなら、次の日、メス達から総スカンを食い、よそよそしい態度を取られる。人気のないオスは、ボスにはなれないそうだ。
また、ボスは、ボスなりに高いプライドを持っていて、飼育係が、みんなの前で、ボスをとがめたり、しかったりすると、ボスは、その係の言うことを、聞かなくなる。そんな時、飼育係はボスが個臣に入った夜、訪ねて行って、子供に噛んで含めるように話をする。すると、ボスは、最後にごめんなさいと謝るという。
チンパンジーは、いつも、人間のすることをジーッと観察している。
たとえば、新米の飼育係がヘマをした時など、上司がチンパンジーの見ている前で、注意を与えると彼らは、翌日から、その飼育係を軽蔑(けいべつ)して言うことを聞かなくなるので、上司は、こうした点にも、十分気をつけている。
また、母ざるが、二番目の子を生み、その赤ん坊を抱いている時、上の子は、それを見て、ギャーギャーと泣きわめく。それでも母親は、知らんふりをして、お前が一番可愛いいんだよと言わんばかりに、赤ん坊を抱きしめる。そして、上の子が、漸く静かになった頃、母親は、別の手で、ヒョイと抱き上げて、お前も同じように可愛いいんだよというように、しっかり抱きしめるという。
以上は、話の一部であるが、チンパンジーにも、こうしたプライドがあるとは、意外であった。が、人間社会とあまりにも類似点が多いので考えさせられた。
それらは、育児期間中、下に弟や妹が出来た時、長子の微妙にゆれ動く心は、多くの人が経験していることと思われるが、このような時、母ざるのスキンシップなど現代の育児にも当てはまるのではなかろうか。
私は教員になってからこれまで、教育の場において、生徒個人に指導が必要な時は、集団の前で、プライドを傷つけないように配慮して、別室で行うなど、個々の人間性を尊重してきたつもりである。が、それでもいろいろな場で、たくさんの生徒の心を傷つけていたのではないかと、このチンパンジーの話から、大いに反省させられた。
(県立田島高等学校教諭)
はだしっ子の体力つくり
須藤敏子
あさのマラソンをやりにいった。
校ていがまっ白になっていた。
ぞうりでゆきの上をはしった。
ザック、ザック、ザック、
足がこおりそう。
足のゆびがいたい。
みんなを見ると、
いっしょうけんめい
がんばっている。
みんないっしょだからたのしい。
これは、私が一年生を担任した昨年、N男が書いた詩である。
心配した一年生も、はだしの生活にとけこみ、初めての冬をはだしで過ごした。雪の降った朝、子どもたちは、張り切って外に出たが、マラソンは足が凍えそうでとても寒かった。負けずに走った後、私の周りに寄って来て口々に、
「先生、ぼく、五周走ったよ。」
「わたし、四周。」
と、満足感いっぱいの笑顔で話しかけてきた。この小さな体に、足が痛くてもつらさに耐えて頑張ろうとする強い心が備わってきたようだ。
はだしの活動、体力つくり。
子どもたちは、三点倒立、一輪車乗り、リズムなわとび、逆立ち等に挑戦している。
私は、いろいろな技ができるようになる子どもたちの力を信じている。そして、一生懸命努力する子どもたちの姿に感動しながら指導している。このような子どもたちを見つめていくことは、私自身の楽しみになっている。
今年、二年生になった子どもたちは、体力つくりの活動を通して、心も体も成長してきた。
逆立ちに興味を持ち、自分の目標に向かって練習を頑張っている。
「先生、Tちゃん、二分三十秒できたよ。」
と、瞳を輝かせて駆け寄って来る子がいる。やり遂げた子がうれしいのは、もちろんだが、他の人のことを自分のことのように喜んでいる姿に心うたれる。
一つのことができるようになるま