教育福島0162号(1992年(H04)04月)-011page

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豊かな心を持ち、自ら進んで実践しようとする子どもの育成をめざす道徳教育

−学校と家庭及び地域社会との連携を深める中で−

双葉郡大熊町立大野小学校

 

本校は、平成二・三年度文部省より指定を受け、標記の研究主題のもとに研究に取り組んできた。その研究実践内容の一端を紹介したい。

 

一、道徳の時間の充実のため家庭や地域社会との連携を図る指導

 

1 保護者からみた児童の道徳性の実態や保護者の考えなどを調査し、授業の中で資料として活用した。また、両親や祖父母の生活体験を語る手紙を用いたり、直接話を聞いたり、児童の実践意欲を家庭に伝えたりするなどして家庭との連携を深める手だてとした。

2 郷土芸能の伝承に携わっている人々の協力を得て、独自の資料を作成するとともに、地域の方々に授業に参加していただくなどして郷土に対する理解と関心を高めた。

 

二、道徳的実践の指導の充実

 

1 「杉の子の一日」による基本的な生活習慣の指導として、月ごとに生徒指導の目標などとの関連を図った具体的なめあてを掲げ、「杉の子カード」への自己反省を通して、実践への意欲づけを図った。

この結果、これまでの自分と比較して、がんばろうという意欲が顕著にみられるようになってきた。

2 児童が自らの一日の生活を振り返り、自己をみつめる機会とするため「杉の子ノート」を利用した。

ノートには、担任からの励ましや賞賛の言葉を添え、保護者にも目を通してもらうよう働きかけた結果、内面にかかわる表現も多くなり、物事を見る目が細やかになり、他への思いやりも深まってきた。

3 本校が伝統的に行ってきたボランティア活動の中で、老人ホーム慰問、地域のお年寄りと過ごす会、暑中見舞い、年賀状づくりなどの奉仕活動は、特に地域の人々に喜ばれており、思いやりやいたわりの心が子どもたちに育ってきた。

 

人養護ホーム慰問(体の不自由なお年寄りに食べ物を口に運んであげている児童)

老人養護ホーム慰問(体の不自由なお年寄りに食べ物を口に運んであげている児童)

 

三、家庭・地域社会との連携を深めるための実践

 

1 道徳教育の意義や学校での児童の姿を家庭や地域の人々にも理解してもらうため、毎月数回、道徳だより「杉の子」を発行し、家庭や地域に配布している。道徳教育の重要性の理解、保護者の考え方の交流、推進会議の活動への理解が深まり、その効果は大きかった。

2 道徳教育に対する保護者の理解を深め、協力を求めるために、全学級が道徳の授業参観を実施した。

参観後は「杉の子懇談会」を開き、学校の道徳教育や授業中の児童の考え方や気持ちに接しての保護者の率直な感想や意見、家庭の協力の在り方などについて活発な話し合いが行われ、道徳教育に対する関心の高まりがみられた。

 

あいさつ立て看板(友だちの作った標語を前に語り合う子どもたち)

あいさつ立て看板(友だちの作った標語を前に語り合う子どもたち)

 

3 地域の道徳的環境を高めるため教師、保護者、地域の指導者の三者で「心のふれ合い推進会議」を組織した。年四回の定例会のほか、適宜臨時会を開き、「あいさつ運動」「あいさつ立て看板」の設置、「親子クリーン作戦」「夏休み・冬休みのめあて推進運動」などの活動を推進してきた。あいさつ運動では、地域ぐるみの実践の結果、ほとんどの児童が明るく元気にあいさつができるようになった。

 

四、成果と今後と課題

 

二年間の研究を通して、道徳教育に対する保護者の理解が高まってきた。それを反映して、児童に望ましい態度や行動が少しずつ育ってきている。今後は、更に学校と家庭との連携の深まりをめざして、親・子・教師の三者の触れ合いの場の設定を一層工夫し、地域の人々の声や意見を積極的に取り入れていきたい。

 

 

 


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