教育福島0162号(1992年(H04)04月)-027page
私のメンタルヘルス
水野岩雄
OA機器等の発達とともに、世の中様々な情報が氾濫している。受験期になると偏差値や内申書の話題が事欠かない。学校生活も含めて社会全体がストレス満杯といった感じである。また、文化が発展すればするほど、人間関係が希薄化し、温かみのあるふれあいが少なくなってくるのも事実のようである。登校拒否や集団生活不適応、いじめ、人間不信といった子どもたちの精神保健面の相談が増加傾向を示す様を見ていると、その感を一層深くし、相談に当たる我々も、ため息の出る時がある。
この頃の傾向として、登校拒否の相談の増加とともに目を引く主訴に、思春期特有の相談が現れた。「自分はおならがしょっちゅう出ているようで、周りの人からじろじろ見られて困る。」
「臭いがしていると周りの人が言っている」「列車の中で、自分の臭いがするとひそひそ噂をしている。」等々と主訴が似通っている。それぞれが内科、口腔外科等を訪れるが、何でもないと言われて相手にされなかったと訴えている。A子さんに「先生、臭いするでしょう?薬出してください。」と言われても私は医者ではないので、薬は出せない。近づいて臭いを嗅いでやっても、結果は医者の診断と同じである。このような症状は、思春期真っ盛りの乙女である中学生、高校生の女子がほとんどである。
彼女たちに、「臭いなんかしないよ。気のせいだよ。」といっても通じないのである。強く否定すればするほど、医者やカウンセラーに懐疑心を抱くのである。
嘱託の精神科医の診断によると、自己臭恐怖または、自己臭妄想症だという。内科のお医者さんでは、対処できないのが現状だそうだ。思春期特有のもので、どうも対人関係をうまく調整できない人、内向的な人に見られるようである。
このような症状に対しては悩みに耳を傾け、受容してやることが大切である。そこで、対人関係を広げ心の解放を図るためにバドミントンをしたり、サンドプレーをしたりする。夢中になって活動している彼女たちから、「臭いがして…」なんていう悩みの姿は感じられない。拒否するのでなく、受容することが救いになっているのだろう。
しかし、「明日また太陽は昇ってくるよ。くよくよしなさんな。」と言って見送るが、悩みを聞いているこちらも結構疲れる。悩みを聞き、子どもたちの総てを受容しようとすればするほどストレスがたまるのである。ある所員は、相談に来た小学二年生の子どもから「担当変われ!」と雑言を浴びせられて憤慨したこともある。
私のストレス解消をする手段は、ここ二、三年続けている昼休みのバドミントンである。若い所員とともに動き回るのは、若干苦しいが、白いシャトルを追って汗を流すのは、次の相談への活力を与えてくれる。
一時のチャイムを合図にネクタイを締め直し、また相談室へ今日も足を運ぶのである。
(福島県養護教育センター事業部長)
子ども知らず
有我繁子
A子は、緘黙的傾向が非常に強かった。無表情のまま一日を過ごし、他の学年と一緒に行動しなければならない時などは、数室から出ることさえできなかった。したがって、級友から責められてはいないものの、孤立しがちであった。このままでは、所属欲求も満たされず、劣等コンプレックスを持つようになるのではないかと懸念された。そこで、
○本人の心情を理解し、話すことを強要しない。
○グループ活動をできるだけ多くし、人間関係の調整をする。
○お互いの存在感を認め合う。
の三点を基本に、本人・学級・家族へのアプローチを試みた。
数カ月、「かわいい髪飾りだこと。」などとなにげない言葉をかけてきたが、いっこうに改善の気配はなかっ