教育福島0163号(1992年(H04)06月)-015page

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すべての活動が児童生徒一人一人にとって自己実現を援助し、自己存在感を与えることを目指して推進されなければならない。

したがって、すべての学校生活の場で積極的生徒指導のアプローチが大切であり、このことが児童生徒の非行防止にも効果を上げることになることを十分に認識する必要がある。

以下、生徒指導を効果的に進める上で重視すべき点について述べる。

 

一 生徒指導体制の確立

生徒指導は、学校の教育目標を達成するための重要な機能の一つであり、学校教育活動のあらゆる場と機会を通して十分生かされるよう努めなければならないものである。そのためには、自校の生徒指導の課題を的確にとらえ、課題解決に向けて全職員一丸となった取り組みが必要である。

(一) 生徒指導について教職員の共通理解を一層深めること

○教職員全員が生徒指導の意義や方法を共通認識し、学校として一貫した指導方針のもとに指導する。

○自校の生徒指導の課題を明確にし全職員で共通理解するとともに、課題解決のための実践事項を具体的に設定し、共通実践ができる指導体制を確立する。

(二) 生徒指導に関する全体計画や指導計画を整備し、着実な実践に努める。

○学校としての基本方針や全体構想をふまえ、児童生徒の実態に着目しながら指導計画の改善充実を図り指導にあたる。

(三) 生徒指導の機能的な組織づくりに努める

○生徒指導が具体的、効果的に行われるように教育相談者、養護教諭等を組織に位置づけ、役割内容を明確にし、協力体制を整えて指導にあたる。

 

二 児童生徒の理解の深化

生徒指導のねらいは、児童生徒一人一人の人格のよりよい発達を目指すものであるから、児童生徒のそれぞれの特徴や傾向をよく理解し把握して指導にあたることが大切である。そのためには、児童生徒一人一人の知識や技能、物の見方や考え方、さらには、感じ方や行動の仕方などについて、一層理解を深める必要がある。

(一) 児童生徒理解の方法

○観察による方法

日常の児童生徒の会話・行動・態度や表情の観察を通して行う理解の方法である。

○面接や検査・調査による方法

科学的な資料を基に理解する方法である。

○共感的理解

観察や面接等においては、教師が児童生徒の立場を尊重して話を聞き、訴えの真意を理解することが大切であり、教師は、許容的・受容的態度で接することが望まれる。

(二) 児童生徒理解の工夫

児童生徒の理解を適切に進めるためには、児童生徒の実情に即した様々な工夫が必要である。

○観察記録や面接記録、調査等の記録を累積し活用できるように保管をする。

○担任外の教師とも情報を交換し多面的に理解する。

○指導上特に配慮を必要とする児童生徒については、生待指導協議会等で理解を深める。

 

三 生徒指導の機能を生かした授業の充実

人間性豊かな児童生徒の育成を目指して、一人一人の児童生徒が意欲を持って学習に取り組めるように、指導法の改善・教材の精選を図るなどそれぞれの視点から授業のあり方が見直されてきたが、それにもかかわらず、無気力・学ぶ意欲の低下が指摘されている。したがって、生徒指導の機能を積極的に生かした授業の展開に努めていく必要がある。

(一) 生徒指導的機能を取り入れた授業改善の視点

児童生徒は授業がわかることのほかに、ほめられたり、励まされたりしながら、心情的に接してもらうことによって、授業に満足感を覚えることが多いのである。したがって、教育相談的アプローチによる授業の見直しを図り、学ぶ意欲を育てる必要がある。

○人間的ふれ合いを大切にする。

児童生徒は、教師と級友との相互信頼・期待を基礎とした人間関係を深めることによって、その期待にこたえようとする意欲的な態度へ発展し、新たな意欲がおきることを念頭におき指導にあたる。

○一人一人の自己存在感を高める。

程度の差こそあれ、児童生徒は自分をもっと知って欲しい、自分のしたこと、発表したこと、考えたことを皆んなに認められたいという願いを持っている。このような感情が自己存在感である。これを高めるためには、学級集団を児童生徒一人一人が十分に力を発揮できるように、温かく励まし、支え、自信を持たせてくれる、支持的風土に支えられた学習集団にまで高めていくことが大切である。

 

 

 


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