教育福島0163号(1992年(H04)06月)-016page
生徒指導の充実を目指して
−高等学校−
一 はじめに
中途退学防止の取組みは、一人一人の生徒が意欲を持ち、主体的で有意義な学校生活を送ることができるように、学校全体を活性化するための取組みということができる。
平成三年度中に県立高等学校全日制課程を中途退学した者は、九百二十名で、前年度に比して百三十六名と大幅に減少している。中退者数が在籍者数に占める割合は、全国の割合が上昇傾向にあるのに対し、本県においては一・二五パーセントと過去十年間の中で最も低い割合となっている。〈資料1〉
中途退学の理由としては、「進路変更」が最も多く四百二十四名で四六・一パーセント、次に「学校生活・学業不適応」による者が三百十六名で三四・三パーセント、そして、「問題行動」による者が九十一名で九・九パーセント、「学業不振」と三十二名で三・五パーセントと続いている。
退学者の減少の主な要因としては、単位不認定の予測される生徒に対し、早い時期に指導の機会を設けたり、長期休業等を利用した学習指導の実施、進級・卒業認定の際の内規の見直しや運用の弾力化、さらには、生徒一人一人にきめ細かく対応した教育相談の充実を図るなどの取組みによるものと考えられる。したがって、中途退学を防止するためには中学校や地域との連携を図りながら、生徒一人一人の人間性を尊重し、生徒のもつ様々な可能性を最大限に発揮させる指導や、生徒が自らを取り巻く複雑な生活環境への適応をしていこうとするための援助、また、人間関係を自らが改善しようとする中で、生徒の個性の伸長や社会性の育成を図ることが大切である。
各高等学校においては、次の県教育委員会「学校教育指導の重点」の「生徒指導」に関する事項に基づき、学校の実態を踏まえ、生徒指導の充実に努めているところである。
(1) 教師の共通理解を深め、校内指導体制の改善充実を図る。
(2) 生徒理解の深化を図り、学校生活への適応指導を進める。
(3) 集団生活における規律の維持向上に努める。
(4) 家庭及び中学校との連絡を密にし、地域ぐるみの生徒指導の推進を図る。
二 生徒指導研究推進校について
生徒指導に関する諸問題について研究を行い、各学校及び地域の実態に即した実践的課題をとりあげ、先進的な実践を試みたりするなどして研究を深め、その成果を広く利用に供し、生徒指導の充実強化に資するため、研究推進校を指定している。
平成二・三年度にわたり、福島県教育委員会の研究指定校として指定を受け、実践・研究を行ってきた県立双葉農業高等学校が平成三年十一月二十八日にその成果を発表し、新たに平成四・五年度の二年間にわたり清陵情報高等学校が「人間としての在り方生き方に関する指導」をテーマに実践を開始した。
また、文部省の研究推進校として指定を受けた小高商業高等学校が平成三・四年度にわたり、「学校生活を充実したものにするための生徒指導の在り方」をテーマに実践研究を進めているところであり、本年十一月にその成果を発表する予定となっている。
三 県立双葉農業高等学校の研究・実践の紹介
双葉農業高等学校においては、「中・高連携による効果的な生徒指導のあり方」をテーマとして、二年間にわたって研究実践を行った。
本研究は、基礎学力の不足が原因で、学習意欲を持てないまま入学してくる生徒に対し学習意欲を喚起し、楽しく授業に参加させるため、「できる喜び」「存在価値を認められる喜び」等を体験させるとともに、中・高連携を重視し、校内研究授業、中学校に対する公開授業、中学校での授業参観、教師相互の指導技術の向上に努めたものである。
中学校との緊密な連携をとおし、中学校に対する認識を深めることにより、生徒理解や生徒の実態に即した指導が可能となり大きな成果をあげたことは、中・高連携をとおした生
資料1 平成3年度県立高等学校中途退学者状況
学年・在籍者・理由 1年 2年 3年 計 前年度 24,380 25,244 24,247 73,871 74,655 学業不振 14 16 2 32 50 病気・けが 8 4 2 14 38 経済的理由 3 1 1 5 9 問題行動等 42 31 18 91 122 進路変更 225 160 39 424 281 家庭の事情 10 10 8 28 39 学校生活・学業不適応 132 132 52 316 503 その他の理由 0 6 4 10 14 計 434 360 126 920 1,056 中退者数/在籍者数×100 l.78% 1.43% 0.52% 1.25% 1.41%
※その他の理由:結婚のためなど