教育福島0163号(1992年(H04)06月)-020page

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ー卜結果にも見られるように、本校に対する地域住民の評価は大変厳しいものがある。従って、本校が地域に根ざし、開かれた高校をめざして積極的に地域との連携に努めることが必要である。そこで、学校農業クラブ活動の地域参加を連携の基本とし、農業部が中心となって地域連携を推進することにした。

1) 奉仕活動

ア 町内の梨栽培農家に対する人工受粉の協力を全校生で行った。

イ JR大野駅・商店街のフラワーポットの管理や町内クリーン作戦・ふるさと産品宅配事業への協力など農業クラブ年間計画に位置づけて実施した。

2) 地域産業振興への貢献

ア ふるさと産品(鮭、キウイフルーツ)の付加価値を高める研究に取り組み、県研究発表大会で最優秀賞を受賞した。さらに大熊町長からも功労が認められ、表彰された。

イ バイオ研究部が野菜のウイルスフリー苗生産の研究に取り組み、特に坊主不知ネギ苗の大量生産に成功し地域の農協から感謝されている。また、食用ギクの産地形成を地域に働きかけ、現在、農家で実験栽培を推進している。

3)地域行事への参加

地域からの要請で町内祭礼への芸能部員による御神楽の奉納や町の「ふるさと産業祭り」とへ積極的に参加し、本校教育活動の一端を紹介している。

4) 学校開放講座等の協力

「やさしい園芸教室」「なかよし園芸教室」を実施したが、この教室を通して学習内容等の本校理解にも役だっている。

 

六 まとめと今後の課題

(一) 研究成果

1) 生徒指導

ア 中学校と緊密な連携により生徒理解が深まり、生徒の実態に即した指導が可能となった。特に、特別活動に意欲的に取り組む生徒が増え、農業クラブの各種大会において東北大会や全国大会に出場を果たすなどの成果がみられた。

イ 意識調査によると、生徒は学校生活に対して前向きな態度に変わりつつある。即ち、学校の現状について「不満型」から「満足型」の生徒が着実に増えており、今後望ましい方向へ進む基盤ができたものと考えられる。

ウ 生徒の学習への取組み状況は以前と大差が認められないが、授業についての生徒の意識は「わからない」がやや減少してきた。これは教師の授業に対する工夫・改善の成果と考えられる。

エ 学校不適応の目安ともなる欠席・遅刻・早退は学年が進むにつれて減少している。また、問題行動も減少しており、生徒は全体として安定化の傾向が認められる。

このことが中退者減少につながっているものと思われる。(中途退学状況は、平成元年度をピークに二年度、三年度と減少傾向を辿っている。)

オ 現場実習や資格取得指導の導入は、生徒が学習内容を将来に生かそうとする態度に変わり、目標を持って意欲的に学習に取り組むようになった。

2) 中・高連携の実践

ア 中学校教師は、本校の公開授業参観などさまざまな連携を通して本校の学習内容や、生徒のいきいきとした学校生活の状況を知り、本校を見る眼が好意的になりつつある。

イ 本校教師側も中学校の進路指導についてとかく批判的であったが、研究を通して中学校の進路指導の実態や教師の悩みを知ることができ、中学校に対する認識が大きく変わった。

3) 地域連携の実践

ア バイオ等の先端技術やふるさと産品に対する研究など地域産業への貢献が地域住民に理解されるようになり、本校を見る眼が徐々に変化している。

イ 地域住民の多くが生徒指導の徹底や本校教育の一層の活性化を望んでおり、地域の本校に対する期待が大きいことがわかった。本校教職員全体がこれに応えようとする雰囲気を醸し出している。

(二) 今後の課題

今回の研究実践を通して、教育内容・指導法の改善などの意欲的な取組みが中学校や地域にようやく理解されるようになった。しかし、効果的な適応指導の糸口を見い出しただけで、その成果はまだ十分ではない。したがって、本校生徒がもっている劣等意識をどう払拭するか、中・高連携の場で、中学校教師に具体的な役割をどう求めていけばよいかなど緊急な課題も多い。

本来、生徒の学校適応を図るには、教師が生徒に働きかける場面と、生徒をひきつけるような魅力のある学校環境づくりの場面とが、うまくかみ合うことにより、達成されるものと思う。したがって、その両面についてひき続き研究・実践を重ね、生徒が本校に入学してよかったと思う学校づくりに努めることが、今後の重要課題である。

 

 

 


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