教育福島0163号(1992年(H04)06月)-023page

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随想

 

日々の想い

 

分校での日々

鈴木浩一

 

て無数の星が輝きだす。思わず校舎の外へ出て何度この空を見上げただろうか。

 

西の山並に太陽が沈み夕闇がせまる頃、空は濃紺から薄紫へと無限のグラデーションを見せ始める。そして無数の星が輝きだす。思わず校舎の外へ出て何度この空を見上げただろうか。

私が勤務する県立浪江高等学校津島分校は、生徒数百九名、職員数九名のミニスクールである。平成二年四月、現在の大和久の地に鉄筋三階建の堂々たる近代校舎として新築移転した。昨年十一月には新校舎落成、創立四十周年記念式典が盛大に挙行された。一学年一学級ではあるが、ミニスクールならではの「生徒と職員のふれあい」が分校の大きな特色となっている。例えば生徒がいつでも自由に、気軽に出入りできるように職員室は開放されている。学習指導はもちろん、入退室の礼儀作法、言葉使い、頭髪、服装など常に個別に指導がおこなわれている。休み時間になると相談相手の職員との話を期待して生徒達が集まる。話の内容は、学業、部活動、就職、進学、異性、身体、友人関係、家庭事情等々さまざまである。

授業中にこんなことがあった。突然、「先生、キツネ」と生徒が声を上げ、グランドの方を指差した。見ると一匹のキツネが平然とグランドを横切っていく。全員の関心がキツネに集中した。するとキツネもこちらを向いたのである。しかもキツネはよそ見をしたせいか、前肢がつまずいて前へ倒れそうになった。これには生徒達も大笑いした。やがてキツネはグランドのはずれの林へと姿を消した。思いがけない珍客の出現で、授業は大脱線をした。この機会に私は、キツネの耳と寒さとの関係を例に、生物の体と環境への対応について話をした。生徒はよく話を聞いていた。

生徒が、都市部では珍しい生物を学校に持ち込むこともしばしばある。ヤマメ、カワエビ、タガメを付近の川で汗だくになって捕ってくれた生物部員。祖父が見つけた在来種のザリガニを持ってきたクラスの女子生徒。草刈りの際に捕えられたウシガエルも運びこまれた。

科学と科学技術は年々進歩している。その速度は人間を含む動物や植物の進化の速度をはるかに上回る。教科書の内容もまた変わる。抽象的概念や分子レベルの記述が徐々に増えていく。多くの人々が抽象的に自然を理解するようになり、実際の自然を知らずにいる。分校での授業や純朴な生徒とのふれあいを通して、変わらない自然の姿を伝えること、抽象でない生きた自然の姿を伝えることの重要性を改めて感じている今日このごろである。

(県立浪江高等学校津島分校教諭)

 

子供と共に

鴫原邦子

 

も出ていたよ。」「あらそう、もう春なのね。また、春探しをしなくちゃね。」

 

「お母さん、お寺の土手にふきのとうがあってね、つくしんぼも出ていたよ。」「あらそう、もう春なのね。また、春探しをしなくちゃね。」

小学三年になる息子と、三回目の春探しが始まりました。季節の変わり目や、何か行事のあるときは、特に目を輝かせ、「ねえ、お母さん…」とうるさいくらい話しかけてきます。息子は小さい頃から人見知りが激しく、私の側を離れたがりませんでした。その子が小学校に入ったとたん、人が変わった様に明るく活発になりました。

人にはいろいろな出合いがあります。子供はまず親と出合い、そして先生に出合います。初めて出合う先生の姿勢が、その子供に大きな影響

 

 

 


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