教育福島0163号(1992年(H04)06月)-032page
特集2
養護教育の推進
養護・訓練の指導の充実を図るために
−養護教育−
一 養護・訓練の概念について
養護.訓練は、昭和四十五年度に告示された学習指導要領に各教科、道徳、特別活動と並んで、新たな領域として設定されました。それ以来各学校の創意を生かし実践を積み重ねてきました。
しかし、その概念については、以前から実践されてきた体育・機能訓練や歩行訓練等の障害種別の考え方があり、それらに偏った考え方だけで実践される傾向もありました。
また、一つの学校の中でも、その考え方やニュアンスが少しずつ異なるということもしばしば見られます。
そこで、平成元年度の学習指導要領の改訂に伴って、養護・訓練について次のような説明がなされていますので、これらを参考にすると養護・訓練がイメージ化しやすくなります。
養護・訓練は、その目標にもある通り、障害への状態を改善・克服するために必要な、技能等を養うことでありますが、この障害が何を意味しているか理解しておくことが大切であります。
ここでいう障害という言葉はWHO(世界保健機構)の国際障害者分類が参考となります。
障害はインペアメント(機能障害)、ディスアビリティ(能力低下)及びハンディキャップ(社会的不利)の三つの概念でとらえると分かりやすくなります。
インペアメントとは疾病等の結果もたらされた身体の器質的損傷又は機能的不全で、医療の対象となる障害です。
ディスアビリディとはインペアメントに基づいてもたらされた日常生活や学習上の種々の困難をさしており、教育によって改善・克服することが期待されるものです。
ハンディキャップとはインペアメントやディスアビリディによって一般の人々との間に生ずる社会生活上の不利益を意味し福祉施策等によって補うことが期待されるものです。
このような概念で障害をとらえた場合、養護・訓練の指導によって改善・克服することが期待される障害とは、主としてディスアビリティの意味での障害であることになるわけです。
さらに、養護・訓練の概念を明確にするためには、次の養護・訓練の内容及び実施上の課題と対策について理解しておく必要があります。
二 養護・訓練の内容の改善
従前の養護・訓練の内容の示し方は抽象的であり、具体的な指導事項をイメージしにくいという指摘があり、今回の学習指導要領の改訂においては、さらに児童生徒の心身の多様化に対応する観点から、これまでの実施の経験を踏まえ、次のような改善が行われているので、役立てていただきたいと思います。
(1) 従前の「心身の適応」については、心と身体の適応という相互に密接な関連がありながらも、内容の整理に当たっては、かなり異質な二つの要素が混在していたことから、これを「身体の健康」及び「心理的適応」の二つに分けたこと。
(2) 「感覚機能の向上」及び「運動機能の向上」については、教育的な観点からそれを活用した認知や運動・動作が重要な指導内容であるので、この点が明確になるように「環境の認知」又は「運動・動作」に改めたこと。
(3) それぞれの内容の程に示されている項目については、それらを相互に関連づけて具体的な指導事項を選定する際の観点が明確になるよう示し方を工夫したこと。