教育福島0163号(1992年(H04)06月)-033page

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三 養護・訓練実施上の課題と対策

盲・聾・養護学校における養護・訓練実施上の主な課題には、次のようなものがあります。

(1) 養護・訓練の目標と学校の教育目標の関連が不十分なため、養護・訓練が学校の中で独立した分野となってしまい、学校教育活動全体の中で適切に指導が行われなくなることがあります。

このため、学校の教育目標や努力目標と養護・訓練の目標との関連を十分図り、教育課程編成上の位置づけを明確にして全員で取り組むことが必要となってきます。

(2) 養護・訓練の指導計画が具体的でないため、長期的な見通しのもとに短期的な展開が十分できず、効果的な指導に結びついていないことがあります。

 

指導計画の体系の例

 

見直しを行い、年間計画や個別指導計画を体系づけて立案する必要があります。

 

このため、養護・訓練の指導計画についてもう一度見直しを行い、年間計画や個別指導計画を体系づけて立案する必要があります。

(3) 養護・訓練の指導を行うに当たって、児童生徒が自ら取り組み、成就感が味わえるような内容、方法の創意工夫が不十分であります。

このため、児童生徒一人ひとりの能力、適性、興味等を吟味するとともに、医学的、心理学的な視点から問題点を検討し、指導上の課題を明確にすることが大切です。

さらに、児童生徒に成就感を味わわせるためには、次のような点に配慮しながら指導に取り組むことが必要です。

○ 努力すれば解決できそうな課題であること。

○ 日常の生活に密着した課題とし、興味・関心を持って取り組むことができるよう指導段階の細分化、教材・教具の工夫、賞賛や激励等を適切に行うこと。

○ 自己の課題を自覚し、努力の結果、達成できたという成功感、満足感が得られるようにすること。

○ 主体的、継続的に課題に取り組むことができるようにするため、長期的な課題とともに、短期的な課題を段階的にきめ細かにとらえられるようにすること。

 

四 養護・訓練の指導計画の実際

養護・訓練の指導を効果的に行うためには、きめ細かな指導計画を作成する必要があります。実際に指導した事例から、障害種別ごとに指導計画の例を示すので参考にしてください。

(1) 盲学校(中学部「養護・訓練」の時間の指導)

《弱視レンズ、ワープロの活用》

1) 対象生徒 A子 中学部三年

2) 障害状況及び生育歴 両眼先天性白内障等の障害により視力は右〇・〇六、左〇・〇一、コンタクトレンズは保持しているが活用しない点字は使用していない。

出産時は異常なかったが、生後間もなく視力障害に気づき、手術を重ねて現在の視力に回復した。性格は明朗活発であるが、学習面では注意集中が困難なところがある。

3) 養護・訓練指導上の課題

 

弱視レンズの活用

 

弱視レンズの活用

 

行動観察、発達状況チェックリスト活用により、A子の実態を把握し、課題を明らかにした。A子は白内障術後のため衝突や転倒による障害の進行に注意する必要がある。見えにくいことで学習に集中できないことが考えられるので、弱視レンズコンタクトレンズの適切な活用が課題となる。また、文章作成力の向上、特に漢字を使用した文章を作成し、コミュニケーション能力を高めることや、市内を一人で行動できるようにすることも養護・訓練の課題となっている。

4) 年間指導目標

ア 衝突や転倒あるいは過激な運動によって網膜はく離や眼圧上昇を引き起こさないようにするための生活

 

 

 


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