教育福島0163号(1992年(H04)06月)-036page
姿勢保持の訓練
ことが多い。肩や手首に過度の緊張がある。喃(なん)語のような発声や自分の手をかむ自傷行為がみられる。食事、排泄等については介助が必要である。
3) 養護・訓練指導上の課題
ア D男は、日常生活を仰臥(が)位または腹臥(が)位姿勢で過ごす。適切な補助をすることによって、不安定ではあるがあぐら座位姿勢をとることができる。そこで、養護・訓練の指導では、他動的に身体の各部位の緊張と弛緩(しかん)の学習を行い、筋活動の制御をしかん活性化し、自己弛緩(しかん)ができるようにすることが課題となる。
イ D男は、視覚や聴覚面に関しては特に問題はないが、がん具をなんとなくなめているといった行動を示すことが多く、人から声をかけられても振り向くことはほとんどなかった。そこで、養護・訓練の指導では、興味や欲求を引き出し、行動の幅を広げ、D男が外界の事物に働きかけることができるよう援助することが課題となる。
ウ 日常生活に直接結びつけることができる排尿の欲求を指導者に知らせられるような技能の基礎を身につけさせることが課題である。
4)年間指導目標
ア 姿勢と運動・動作の基本を習得するために、肩や腰、脚などの部位を他動的に緊張と弛緩(しかん)の学習を行い、自己弛緩(しかん)を身につけさせ、能動的に周囲の環境へ働きかけることができるようにする。
イ D男自身の興味や欲求を引き出し、援助を受けながら「ひと」や「もの」に積極的に働きかけることができるようにする。
ウ 排尿の欲求を何らかの動作で援助を受けながら、指導者に知らせることができるようにする。
年間指導計画
(5) 須賀川養護学校(小学部「養護・訓練」の時間の指導)
《気管支喘(ぜん)息児の管理と意欲の向上を図る指導》
1) 対象児童 E男 小学部五年
2) 障害の状況及び生育歴 気管支喘(ぜん)息。正常出産。主たる養育者は祖母であった。幼稚園に入園後間もなく喘息発作が起こったが、程度は軽かった。生活面では、「落ち着いて人の話が聞けない」など注意散漫な面がみられた。
小学校入学後、二年生で喘(ぜん)息等による遅参十六日、欠席四十九日、そして、三年生になって発作が頻発し、入退院を繰り返し、六月の入院と同時に本校へ転入学となった。
家族構成は、両親、姉、弟、妹、祖母の七人暮らし。
3) 養護・訓練指導上の課題
ア 入院後、喘(ぜん)息発作の頻度は少なくなってきているが、風邪をひいたときや自宅に帰省したときに発作を起こすことが多い。心理的な緊張状態も誘因と考えられるので心理的適応が課題となる。
イ やせ型で喘(ぜん)息児特有の体型であ
適度の運動と健康管理
表4 D男の養護・訓練の課題と主な指導事項
課題 主な指導事項 身体の健康(生活リズムの形成) 規則正しい生活リズムの形成を目指す。 心理的適応(対人関係の形成) 人との関係を基盤とした情緒の安定を図る。 環境の認知(感覚の活用) 能動的に環境へ働きかけられるよう援助する。 運動・動作(姿勢、動作の基本の習得) 姿勢保持や移動など、身体の使い方の基本となる訓練を行う。 意思の伝達(相互伝達の基本的能力の習得) 何らかの方法で援助を受けながら意思が伝えられるようにする。