教育福島0163号(1992年(H04)06月)-037page
るため、体力の向上に努めることが必要である。鍛練の中には障害を克服する意志力を高める心理的な内容も含まれており、E男にとっては大切な課題である。
ウ 養育上の問題や妹の出産などもあって、母親のE男への愛情が少なかった家庭環境や父親の厳しい養育態度も喘(ぜん)息発作の誘因に関係があるものと推測される。
母親の愛情はもとより、父親にもE男の援助に協力してもらい、家族内の対人関係の改善に努める必要がある。そして、学校の教育活動全体を通して、こうしたE男の不安定な情緒面の安定を図る必要がある。
4) 年間指導目標
ア 教師や友達との信頼関係を深めて、日常の身辺処理や学習等に積極的に取り組む態度を養い、障害を克服する意欲の向上を図る。
イ 身体の不調が、発作の誘発とならないよう、身体鍛練を通して、体力や抵抗力を高め、健康の保持・増進に努める。
ウ 食事(栄養)、運動、服薬、休養、睡眠など、自己の生活のリズムに合わせてコントロールできるようにする。
エ カウンセリングを通して家族の人間関係を調整し、より良い環境の整備に努める。
五 今後の課題
各学校においては、養護・訓練の指導を学校の教育活動全体を通じて適切に指導する必要を認めながらも、養護・訓練の時間の指導に負うところが多くなっています。今後、各教科や特別活動等の指導計画の中に、養護・訓練を適切に位置づけて実施することが課題となります。
また、養護・訓練の指導は、専門的知識や技能を有する教師を中心にしながらも、目標達成のためには全教師の協力が必要となってきます。
しかし、一部の教師だけに頼ってしまう傾向が見られるため、もう一度指導体制の見直しを図り、全教師が主体的に取り組んでいく必要があります。さらに、養護.訓練の指導内容については、各障害ごとに具体的な指導事項の選択ができているものの、それらを児童生徒の実態に応じて相互に関連づけて構成することが不十分です。今後、各学校では、自校の実情を考慮し適切な指導事項の選択と指導法の改善を図るとともに、実施計画や単元の展開案の創意工夫に一層努める必要があります。
今日、盲・聾・養護学校に就学している児童生徒の障害の程度が重度・重複化、多様化している状況にあっては、意欲の喚起が大きな課題となっています。養護・訓練の指導に当たっては十分留意して指導を行い、児童生徒が積極的に自己実現を図ることができるようにしなければなりません。
言うまでもなく、視覚や聴覚、運動機能等の障害そのものを改善することは医療の対象ですが、これに対して児童生徒の障害の状態を改善・克服し、障害に応じて様々な場面で適応を図りながら意欲的に取り組めるような人間に育てることが、養護・訓練であるということを改めて確認しておくことが大切であります。
養護・訓練の目標は、児童生徒の心身の障害の状態を改善し、又は克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培うことであり、この目標は、養護・訓練の時間の指導だけでは決して十分に達成できるものではなく、学校の教育活動全体を通じて適切に指導することによってはじめて達成できるものであることを再確認する必要があります。
表5 E男の養護・訓練の課題と主な指導事項
年間指導計画
月 グループ養訓 全体養訓 4 ・養訓について(生活様式の理解) ・新入生歓迎会をしよう 5 ・喘(ぜん)息発作について(病気の状態の理解) ・栽培(作物の苗植え) 6 ・病棟生活の問題(望ましい生活習慣の確立) ・校内球技大会に向けて 7 ・夏休みのすごし方(生活様式の理解と実践) ・栽培(作物の手入れ) 8・9 ・自分にあった運動(身体活動の実践) ・運動会をしよう 10 ・作品製作(意欲の向上、積極的生活態度の育成) ・学習発表会に向けて 11 ・収獲・調理等 12 ・冬休みの生活(生活様式の理解と実践) ・お楽しみ会をしよう 1 ・チャレンジ大会(身体活動と意欲の向上) ・ゲーム大会をしよう 2 ・チャレンジ大会 3 ・1年のまとめと反省(生活様式の理解と実践) ・卒業生を送る会をしよう