教育福島0164号(1992年(H04)07月)-014page
1) 個の特性をとらえる視点
個の特性は、児童生徒一人一人に自発的・主体的活動を促し、教師がその活動を援助していく過程でより的確に把握できるものである。
ア 興味・関心、意欲、態度
イ 学習速度(思考、表現、判断)
ウ 学習内容の達成度、到達度
エ 学習スタイル
2) 授業実施上の配慮事項
個性を生かすためには、自分の意志や感情を自分なりに表現させたり発表させる場を意図的に設定したり、多彩で多様な学習活動を展開させることが必要である。それによって、自分や相手の個性に気づき、それを深めあい、磨きあうこともできる。
ア 教師の指導姿勢
教師の論理を優先(教師主導)させる画一的な指導から脱却し、児童生徒の主体性を尊重し、一人一人のよさを見つけるようにする。
イ 指導方法・形態の工夫
個に応じた柔軟な指導や援助に努め、多様な学習活動を取り入れる。
ウ 事前と事後の手だて
個に即した指導目標、到達目標、学習課題を設定し、授業を構想するとともに、事後の評価を工夫し達成感を感得させる。
四 道徳教育の充実
1 学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育
道徳は、行いが善ければすべて善しとは言えない。また、動機が善ければ結果はどうでもよいとは言えない。つまり、内なる動機も善くて結果としての行為も善いという状態を求める必要がある。そのためには、「内面からの指導」、「行為からの指導」、「体験による指導」、「環境による指導」等の調和を図りながら進めていくことが大切である。
(1) 内面からの指導
この指導の中核となるものとして、「道徳の時間」の指導がある。
道徳の時間の指導は、道徳教育の目標達成を目指し、計画的、発展的な指導を通して各教科や特別活動における道徳教育の「補充、深化、統合」を図る場である。それにより、児童生徒の道徳的心情を豊かにし、道徳的判断力を高め、道徳的態度と実践意欲の向上を図るなど、道徳的実践力の育成を目指している。
〈指導上の配慮事項〉
ア 全体計画の中に、道徳の時間の指導を明確に位置付け相互の関係を明らかにしておくこと
イ 道徳の時間を大切にし、時数の確保に努めること
ウ 道徳の時間の目標は、道徳的価値を知識として教えるのではなく、児童生徒自らが内面的に自覚し、主体的に行為を選択し、実践することができる内面的な力を育成するところにある。そのためには、児童生徒や学級、学校の実態を的確にとらえ発問や資料等を十分に吟味するなど指導法を工夫改善すること
エ 教師は、重点目標との関係から一人一人及び全体の児童生徒の道徳性の変容の傾向をよくとらえ、よりよく生きようとする児童生徒の努力を評価しその人間的成長を見守ること
(2) 行為からの指導
学校の教育活動全体で行われる道徳教育は、学校生活のすべての具体的場面に即して繰り返し指導することによりその結果が期待される。
日常生活の様々な場面で道徳的価値の選択を迫られたとき、その行為を選択し、行動決定する自己の内面的資質がより望ましい道徳的価値による場合は、それはより高い道徳的実践であるということができる。
児童生徒の日常生活の基本的な生活習慣をはじめとする日々の言動が望ましい道徳性を身に付けたものになることを目指して行うのが、道徳的実践の指導である。
〈指導上の配慮事項〉
ア 児童生徒の発達段階を考慮し、発展的に指導すること
イ 全教育活動を通して、一貫性と継続性のある指導をすること
ウ 学校の体制を整え、共通理解を図って指導すること
(3) 体験による指導
今後の社会の変化に対応して主体的に生きていくためには、基礎的、基本的な能力を養い、それを具体的な体験活動の場で活用して自ら学ぶ意欲的な学習の仕方を身に付けさせることが必要である。
道徳教育における豊かな体験とは、豊かな心の育成にかかわる体験であり、道徳の目標や内容に示されている事柄をより内面的に自覚したり、より主体的な行為として表わすことのできる体験であるということができる。児童生徒の日々の生活における体験が道徳性の視点からみて偏りなく充実したものになるよう、その場と機会を積極的に設けていくことが大切である。
〈指導上の配慮事項〉
ア 各教科や特別活動における体験活動と道徳の時間を関連付ける指導に心がけること
イ 児童生徒が主体的に展開できる活動を重視すること