教育福島0164号(1992年(H04)07月)-025page

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ならないの。もっとかっこいい曲だったらいいのに。」

という声が出てきた。この言葉はショックだった。

教師と児童の願いがかみ合わず、練習の成果が表れない日が続いた。伝承太鼓の歴史の重みを感じるとともに、安易にとびついた自分の愚かさを感じた。

しかし、担任の先生方は、

「これは、子どもたちにとって一生忘れられない曲になるから。」

と言って、児童と話し合いながら、毎日練習を続けてくださった。

練習の成果か、ある日、曲がぴったり合い、考えていたような「大波太鼓(おけさマーチ)」が完成した。この時、全員の心が一つになったと強く感じた。

「世界に一つしかない私たちの曲だ。」

児童の意識も変わり、演奏するのを毎年楽しみにするようになった。

今年の運動会でも太鼓のリズムが、大波の空や人々の心に響いていた。

(福島市立三河台小学校教諭)

 

誤った性教育と子供たち

小熊智恵子

 

「気持ちが悪い」「大変だ、怖い」

 

「気持ちが悪い」「大変だ、怖い」

これは、かつて中学三年生に妊娠出産をテーマにした「生命の創造」という映画を見せた時の生徒の感想である。この映画は、最後にラマーズ法により夫立ち会いのもと自然分娩を行い、無事出産し、夫婦が赤ちゃんを抱き泣いて喜ぶ場面で終わる。生徒に性の理解を深めるものと期待しての実践であったが、意外にも個々の受け取り方が違い、授業で性を扱うことの難しさを改めて実感した。

また、私は昨年の十一月A町の婦人学級から「思春期病とその対応」と題し、講話を依頼された折、性をどう扱うかの問題は、今家庭でも急を要するものとなっており、中学生のみならず小学生の段階から取り組まなくてはならない問題であることを痛感した。というのは、集まった多くの母親から「テレビ、雑誌等、子どもの目につくところに性描写が多く、どう対処したらいいのか分からない」とか「小学生にも性教育が必要であると考えても、何から始めればよいのか見当がつかない」などの戸惑いの声が多かったからである。

子どもたちの性に対する意識は、性情報の氾濫や大人たちのそれに接する態度に大きく影響され、かなりゆがめられているように思う。このことは、小学生といえども安心はできないのではないかと思っている。今話題となっているコミック雑誌をとりあげるまでもなく、性を亨楽的なものとして受けとめたり、また興味本位にとらえ、ポルノ雑誌等をまわし読みしたりする生徒等がいることは、よく耳にすることである。「電話相談」にかかってくる青少年の性に関する悩みなども、誤った性知識やとらえ方からくるものがほとんどであるという。

このことから、子どもたちは、自分に本当に必要な性情報を得られずそれだけに性に対し正しい知識がなく、理解もしていないことがよく分かるのである。

性教育は科学の教育であると同時に、人権の教育、自立の教育、男女共生の教育であると言われている。

本年度より、全国一斉に小学校五年生から、理科と保健の授業で、学級担任による「人間の性」を取り扱うことになった。養護教諭として、新学習指導要領をどう受けとめ、児童生徒の個人指導にどう対応していったらよいのか、また学級担任への資料の提供や、担任からの共同授業の依頼にどう参画協力したらいいのか、今後に課せられた大きな問題であり、更に勉強していかなければならないと、今真剣に考えている。

(喜多方市立豊川小学校養護教諭)

 

 

 


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