教育福島0164号(1992年(H04)07月)-031page
の在り方が求められる。
このような「環境を通して行う教育」の基本を踏まえ、それぞれの幼稚園においては、幼児の心身の発達や幼稚園、地域に即した幼児期にふさわしい教育の展開を目指すことが大切である。
4 指導の充実
幼児が環境にかかわり、主体的な遊びを通して健全な自立を促し、集団生活の中で人間に対する信頼感、物事に対する興味・関心、運動能力の基礎となる力を培うためには、幼児期の発達の特性をとらえ、直接体験を充実させる指導法の工夫に努めていかなければならない。
(1) ねらいが総合的に達成されるようにする
幼児はひとつの遊びを始めても、目的に向かって一直線に進んでいくことは少なく、多様に変化しながら展開していく。
そのような遊びの展開に応じて幼稚園教育のねらいが総合的に達成されるように、幼児の発達する姿を様々な側面からとらえ、丁寧に逐次指導を行っていく必要がある。
(2) 豊かな心情や感性、思考力などを育てる。
毎日の生活の流れの中で、幼児は自分の興味や関心に基づき、具体的、直接的な体験をしている。
幼児が感動した事に、教師もいっしょに感動を共有する態度や心が、幼児の豊かな感動体験を促すことにつながってくる。これらの経験が繰り返されることにより発達に必要な様々な力を獲得していく。
主体的にまわりの環境や自然と触れ合い、それらを通して十分に活動が展開できるようにし、知的好奇心や探究心を満足させていくことが大切である。
(3) 幼児の主体性を培う
初めて集団生活を経験する幼児にとって、教師は最も頼りになる存在である。その教師の働きかけや行動などから、幼児はいつも温かく見守られ受け入れられているという安心感がもてるようになる。
そのためには、教師は幼児の動きを認め、受け止め、一人一人の動きをつかむことが大切になる。教師が他のことにかかわっていて、今、自分に目が向けられなくても、信頼感を持って待つことができるようになる。
そのような信頼感が基盤となり、遊びを進めていこうとする主体的な態度が培われていく。
(4) 自発性を促す保育に努める
幼稚園が幼児一人一人にとって楽しく充実したところであれば、自分のもっている可能性をその幼児なりに十分発揮できるようになる。
なかなか遊べない幼児がいるからと気をもんで一生懸命遊ばせようとするよりも、安心して遊び出せるような雰囲気をつくってやることが大切であり、自分から遊び出せることが自主性・自発性につながっていく。
幼児に「この活動をさせよう」「これを教えよう」と活動を与えるのではなく、今、ここで育てたいものは何かという具体的なねらいに向けて環境を構成し、活動が生まれるようにしていくことである。
環境構成の在り方を人的・物的な両面から見直していかなければならない。
また、教師は幼児が望ましい方向に向かって活動が展開していけるように、必要な援助をしていくことが大切である。
今後、幼稚園教育の充実を図るためには、保育の場を通し、具体的な場面を取り上げ、環境構成の工夫、教師の援助の在り方等について、教育要領の趣旨に沿って研究を深めていくことが大切である。