教育福島0164号(1992年(H04)07月)-048page

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図書館コーナー

 

身近な図書館とその展望

−県立図書館−

 

日本の近代図書館は、欧米に比べて大きく遅れているといわれています。その要因は、設備率の低さや資料費の不足等いろいろ指摘されていますが、利用する皆さんの意識のずれも大きな要因の一つです。つまり、音の古い図書館のイメージが未だ皆さんの中にあって新しい図書館をどう利用すればよいのか戸惑っているのではないかということです。

しかし、考えが古いなどといってみてもなかなか納得いかないでしょうからここで幾つか質問してみたいと思います。

まず一つ目の質問です。

「皆さんが日頃図書館を利用しようという時に、多少遠くても大きい図書館へ行きたいと思いますか。それともすぐ近くに小さい図書館があればそちらに行きたいと思いますか」

たぶんかなり多くの人は、資料の多い大図書館に行きたいと思うのではないでしょうか。利用する以上少しでも多くの資料をみたいというのは当たり前のことです。

では、こういう質問ならどうでしょう。

「あなたが日頃辞書を使うとしたら、二十巻以上もある大辞典と一冊で使える広辞苑のようなものとどちらを使いますか」

これは使う目的によっても違いますが、大抵の場合は何冊にも分冊された大辞典を使う必要はないでしょう。ある程度の内容を備えていれば使い易さからいっても一冊のものを使すことの方を選ぶ人が多いはずです。

このことは、図書館においても同様です。

大きい図書館は、どういう資料があるか把握することが容易でありませんし、これを使いこなすのはとても難しいことです。しかも休日などは、多くの人が来ていてゆったりと本を読むこともできません。ただ、読みたい本を見つけたらスーパーのように貸出の列に並んで本を借りることが関の山です。

ところが小さな近くの図書館ですと、日頃通って話をしたり、必要な本を探してもらうこともできます。大きな図書館でもこれらのことはやっていますが、細かいところまではなかなか対応できません。

このようなことを考えると、意外に近くの小さな図書館の方が便利だとは思いませんか。

以前の図書館は、資料がとても貧弱で利用者の要求に応えることがとてもできませんでした。ですから、どうしても資料の豊富な図書館に行きたいと考えました。

しかし、現在の図書館は小さなところでも資料は新鮮で豊富です。図書や紙芝居の他にも雑誌やビデオテープ、CDなど多種多様な資料を揃えるようになってきました。予約もできますし、自館になければ他の図書館からも取り寄せてくれます。首都県では、一カ月に数千冊の本が県立図書館から市町村の図書館に配送されています。コンピュータで市町村の図書館から県立図書館の資料を検索して予約できるところも出てきました。

現代の情報化社会は、OA機器と通信技術の発達に支えられて著しい進歩を遂げてきました。これは図書館にも大きな変化をもたらすものでした。つまり、今まで独立独歩の道を歩んできた図書館が協力体制を敷くようになり、情報流通の進歩に合わせて物流も活発化してきたのです。小さな図書館はこれによりさらに強化されたわけです。最近の町や村の図書館が、地域の人の多くに歓迎されているのは、そんなところにあるのです。

今年の四月開館した塙町の図書館は、駅に併設して造られました。かつては閑静な地域に格調高く作られた図書館も、ここでは町の人達の利便を第一に考え、多くの人でにぎわう図書館を目指しています。

こういう図書館を生み出した功労者は一図書館を今まで利用し支えてきた人達です。何といっても図書館は多くの人に利用されることで存在しています。そして、今後も図書館は利用者によって進歩していくでしょう。

 

 

 


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