教育福島0165号(1992年(H04)09月)-039page

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おもな病気の症状と対応

 

病弱・身体虚弱の子供たちは、一般の子供たちと根本的に異なるものではありませんが、病弱・身体虚弱の状態をもたらしている疾患とその程度は様々ですので、一人一人の病状に即した特別な配慮が必要になります。

そのためには、直接主治医に聞いたり、指導方法との関連を相談したりするなど、医療と密接な連携をとって基礎知識をもつことが大切です。

次に、気管支喘息・腎疾患・心疾患など、主な疾患の症状と対応について述べてみます。(1) 気管支喘息は、呼気性呼吸困難発作を伴う疾患で、息が十分に吐けず発作的に息苦しくなります。しかし、治まってしまうとそのような状態があったとは思えないほど普通の状態にもどり、運動なども元気よくやることができます。

喘息発作時の気管支は、図1のとおりで気道が狭くなるため息が吐けなくなります。

発症や発作の原因は様々で、治療方法も子供によって違います。かかわり手は、くじけず長期間根気よく努力を続ける意欲を湧き立たせ、励ましてやることが大切です。

 

喘息発作時の気管支

喘息発作時の気管支

 

正常時の気管支

正常時の気管支

 

(2) 腎疾患は、急性と慢性に分けられ、主に蛋白尿や血尿など尿の異常やむくみなどがみられます。

腎疾患と診断されたら、主治医の指示に従って、安静、保温、食事療法を守ることが大切です。又、過度の運動や感冒などの感染によって悪化させないように十分注意しなければなりません。

(3) 心疾患の子供は、医学の進歩によって、病弱養護学校だけでなく通常の学級にも在学しています。心疾患を持つ子供は、突然死の危険があるので、「何を制限するのか」主治医の指示を事前に受けておくことが必要です。けれども、「制限」によっては積極性を失ったり、反対に過保護で自分一人では何もできない子供になってしまったりしがちです。

ですから、「子供がどうすれば学校生活を楽しみながら、心臓病を克服していけるか」医師や家族と十分話し合うことが大切になります。

 

病弱・身体虚弱の子供への理解

 

病弱・身体虚弱の子供たちを理解するためには、医学的な側面のほかに、心理的な側面、教育的な側面、家族を中心としたかかわりの面などから考えていくことが大切です。

(1) 病弱・身体虚弱の子供たちは、性格や行動上過度の依存性、逃避性、攻撃性、意欲低下などが指摘されています。こうした問題は、幼児期から闘病生活を送り、入退院の繰り返し、病気への不安、医療面からの生活や活動の規制などから生じる二次的障害です。情緒が不安定になりやすい状態を受け止め、二次的障害が起こらないようにかかわることが大切です。

(2) 医療や生活規制などのため、学習の空白や身体活動の制限、経験の不足などを伴っていることがあります。一人一人の実態を十分把握して、創意ある指導方法を工夫し子供たちが主体的に学習に取り組めるようにしたいものです。又、できるだけ直接体験や経験の場を設け、成就感や満足感を得させ、意欲の喚起に努めたいものです。

(3) 家庭環境が子供の成長発達に及ぼす影響は健康な子供以上に大きく、さらに、家族の愛情は、健康状態の回復・改善に重要な役割を果たすことから、家庭における療育の援功を行うことが必要です。特に、過保護、過干渉、拒否など極端な態度でなく、子供自身が健康に必要な実践的態度や習慣を身に付けるような援助が大切です。

尊い命を受けた子供が、様々な病気で苦しんでいる中において、どのようなことに生きがいを持とうとしているのかを知り、共感的理解を示し「今日一日生きていてよかった。」という感激を味わわせたいものです。

 

 

 


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