教育福島0166号(1992年(H04)10月)-017page

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対象児の三名は、提携施設の入所児、幼稚園入園児、家庭養育児であって生活環境の違いがあるため、十分な調査・観察等を行い、入学後の指導に備えるという考えから、日程を調整しつつ、個別的な体験学習を数回行った後に全員で合同体験学習を行うという方法をとった。

1)入級学級の選択

対象児をどの学級に入れて体験学習を行うかについては、教育相談時の資料をもとに校内就学指導委員会が中心となって原案を作成し、小学部会においてその都度話し合いを実施した。また、対象児を数回にわたって体験入学させる場合、幼児の実態を詳しく知るために必要な様々な学習環境や集団の中での実態を観察するという方法をとり、学級を決めないで毎回替えて複数指導者による観察を試みた。

2)実施方法及び内容

対象児それぞれの健康状態や学習に集中できる時間等を考慮して徐々に在校時間を延長させていく方法をとり、第一回目は午前中二時間程度、二回目は昼食を含めた時間、三回目は午後の学習へ参加し、慣れさせる工夫をした。また、通学方法についてもそれぞれの状況に合わせて段階的に行った。施設から約一キロメートルの距離を、登校・下校とも徒歩による通学を試みたり、自宅からの通学を想定しスクールバスによる通学を実施するなど、個人ごとの課題を一つずつ確認指導しながら、最終段階である「一日入学並びに入学説明会」につなげていった。

3)資料(観察記録表)の活用

教育相談時の資料をもとに、体験入学ごとの行動観察や保護者からの情報などを整理し、個人ごとの行動観察記録表を作成した。これをもとに次回の学習の内容を計画したり、就学時を想定した課題等の把握に活用した。

数回の体験入学を実施したことでそれぞれの障害の程度と配慮すべき事項を確認することができたことは勿論であるが、その都度、保護者との話し合いから共通理解を深めることができたことも大きな成果であった。

 

体験入学(リズムに合わせて)

 

体験入学(リズムに合わせて)

 

体験入学(徒歩による通学)

 

体験入学(徒歩による通学)

 

3、一日入学・入学説明会

平成四年度本校へ入学を予定している全員(五名)に三月中旬、一日入学・入学説明会を実施した。それぞれの児童は該当学級に入って、学習へ参加させ、並行して保護者に対しては入学の心構えや準備物等の説明を行った。特に、給食については、保護者も一緒に参加させ、その後、摂食上の問題点について具体的な話し合いをして、健康面での配慮事項を確認した。

これまで一日入学・入学説明会を例年実施してきたが、本年度は教育相談並びに体験入学が年間を通して計画的に実施し、運営されたので、単発的な説明会に終始せず、就学指導の一環として行うことができた。

 

五、研究の成果

 

(1)継続的な調査や教育相談から就学指導を実施することによって、障害を有する幼児(新小学部一年生三名)に適正な就学を進めることができた。更に、個別的な体験学習を重ねたことによって、就学後の実態把握に関する基礎的資料の作成ができたこと、そして、一日入学の折の学習が三名同時に行うことができたこと等、個別の場合と初回の体験学習との相違点を発見できた。

(2)個別体験学習を数回実施したので、その都度、保護者との話し合いの機会もふえ、保護者が次第に心を開き、お互いの信頼を深める

 

行動観察記録

 

 

 

 

 


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