教育福島0166号(1992年(H04)10月)-023page

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随想

 

日々の想い

 

ある山あいの学校

山田昭栄

 

りきると才鉢で左の橋を渡ると貝泊、石住中学校はそれから四キロ先にあった。

 

御斉所峠を越えて下ると雨が雪になる。気温の差が激しい。下りきると才鉢で左の橋を渡ると貝泊、石住中学校はそれから四キロ先にあった。

二十数年前この地に赴任した。軽トラックに荷物を積み砂利道をコトコト進んだ。道は大きな枝に覆われ昼なお暗い。助手席の家内の前には二才と四才の子供が心配そうに背をのばし外を眺めていた。一時間して教員住宅についた。ほっとした。

入学式も無事終わり、一年担任十八名で新たに出発、生徒達の眼は澄んで輝いていた。心配していた近所の方々もよく、家内や子供達のお陰ですぐ親しくなった。小学生やクラスの生徒達が暇があると遊びにきた。

庭の横に薬師堂がある。年に一度酒をくみかわし笛や太鼓に合わせて皆んなで踊る。としをとった方々踊りがうまい。私も生徒も加わった。

その時以来おとしより達が我が家のベランダに来ては、集まる子供達に色々なことを話してくれた。授業参観の道徳の時間では意見や感想をいうおばあさんもいた。また春がやってきた。全校生は自分で作った巣箱かけやフキとりに忙しい。一段落つくと私は生徒達に連れられて山菜とり、生徒の中には名人がいて案内してくれる。鹿のようだ。「先生早く」とても追いつけない。しかし欲は疲れを忘れさす。収穫は多いがもらったもの半分。住宅の裏に畑を借りて野菜を作った。春菊などすぐ食べられる。川では石の間の魚を手でつかまえた。石をハンマーでたたいて魚をとるのもこの時知った。初夏になると部活一色、ここも例外ではない。

女子はバレー、男子はハンドボール、男子のそれをやることになったが私も生徒も知らない。初めての部活だ。そこで生徒と共に高校の試合を見学したり、好間中や小川中に行って教えを乞うた。ルールブックと首っぴき、そして猛練習、市大会を経て念願の県大会、優勝候補と互角の戦い。

地域の人達の応援も力が入った。「先生、おいら頑張ったね」「成せば成るさ」選手達、力を出しきった。

夏が終わり秋がやってきた。学習発表会、小・中とも準備に忙しい。地域の人達こぞって見にくる。個々の能力が引き出されて楽しい。秋が深まると勉強に力が入る。宿直室や住宅にもやってくる。真剣だ。成績もあがる。美しい紅葉の葉も落ちると荒涼とした山々になる。冬日の陰りも早く空はいっそう狭くなった。家族と共にこの地にとけこみ自然の美しさ、人情の豊かさに触れた日が懐かしい。

今後も出合いを大切にお互い理解し信頼し合って行けたらと思う。

(いわき市立川部中学校教頭)

 

感動を共有する喜び

山本由美子

 

ウれており、この時間の中で私は、W君とマンツーマンで取り組むことになった。

 

教師になって三年目を迎えた。「先生」という響きにもようやく違和感を感じないようになり、とにかく無我夢中で走ってきたような気がする。二年間担任した子供達と離れ、新しい子供達との出会い。今年はどんな感動をどれだけ共有できるのだろうかと、胸躍る気持ちで新学期を迎えた。本校は、養護・訓練という時間が週四時間設定されており、この時間の中で私は、W君とマンツーマンで取り組むことになった。

W君は小学部一年生。両上下肢にまひがあり、移動手段は車いす。本校に隣接している県総合療育センターに入所しており、そこから毎日通

 

 

 


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