教育福島0166号(1992年(H04)10月)-030page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

る。水面近くに上がってくるメダカ、沈んでくるのを待ちかまえている横着メダカ。一ぴき残らず口をパクパクさせて食いついてくる。しかし、学級の子ども全員が教師の与える餌に飛びついてくることは稀である。

ある図工の時間、おしゃべりの絶えない正男がいつになく静かだった。黙々と絵筆を動かしているのである。目は画面から離れない。周囲の腕白仲間の存在などすっかり忘れて、一人床に座り込んでいるようだ。にこにこしながら、ガクアジサイの小花やおしべを一筆一筆、チョコチョコ、動かし、描き込む手をやすめない。H男の目には他の子ども達には見えないアジサイの細部がはっきり見えるらしい。絵の世界に浸りきっているようであった。

中庭のアジサイの六月下旬の花盛りの頃のスケッチから夏休みあけの九月まで続いたが、H男の心の中に咲いたアジサイはせっせと描き上げられていった。

国語の書き取りの時間には

「H男君、よく見てごらん。ちょっと教科書の字と違うんじゃない。」よく一、二画多かったり少なかったりする漢字を書く。注意をして指導してきたが、どうやら正男には目の前の対象が他の子とは異なって見えるらしいのである。

このH男のアジサイの絵を児童画展へ出品したら中央にまで送られて特選になった。これが個性の発揮というのだろうか、H男が精根こめて描き上げた絵が認められたのである。家族の方々の喜びはひとしおで、母親は、

「いい夢、見させてもらいました。」を繰り返し、東京の会場まで出かけて行った。H男はやんちゃ坊主の看板を取り外されて自慢の息子に昇進し、その会場で祖父が願ってコピーをしてもらった彼のアジサイの絵はH家の宝物になってしまった。

『アジサイがいっぱい咲いているところで腕ずもうしてみよう。』

と教師が投げかけた提案にH男は強烈な反応を示した。図工の時間になると、楽しそうな笑顔と真剣なまなざしでもって取り組み、すっかり落ち着いた児童になった。

あれもこれもとぎっしり詰まった教育課程の中で、四十名の個に応じた教材提示はむずかしく、メダカのように、毎朝、同じ餌で寄らせることはできない。しかし、正男のすばらしさの発見、その家族の喜びを見たとき、クラスの子ども達一人一人にとっての“H男のアジサイ”を見つけるよう努力していかねばと思う毎日である。

(桑折町立醸芳小学校教諭)

 

トピック

 

教育長といっしょに楽しい給食

−福島市立瀬上小学校−

渡辺忠男県教育長は、九月三十日(水)、瀬上小学校の児童からの招待を受け、四年二組の児童たちとランチルームで給食を試食しました。

同校は、平成二・三年度県教委などから学校給食改善研究校の指定を受け、招待給食、交流給食やバイキング給食など食事内容と食事環境の充実に取り組んでおり、その一環として、県教育長、柴山進県教委保健体育課長、佐藤正欣福島市教委保健体育課長が招待されました。

献立は、五目ご飯、魚の照り焼き、おひたし、みそ汁、果物。五目ご飯の中には、六年生が中庭で栽培したシイタケが入っており、招待された方々は、子供たちと歓談しながら食事をし、その後、質問に答えるなど楽しいひとときをすぎしました。

 

第一園県民スポーツ・レクリエーション祭

 

第一園県民スポーツ・レクリエーション祭

生涯スポーツの普及と振興を図るとともに、健康で明るく潤いのある県民生活の実現を目指すことを目的に、「第一回県民スポーツ・レクリエーション祭」が十月十日から十一目にかけて、福島市において開催されました。

十日は県青少年会館において「総合開会式」、「記念講演」、「前夜祭」を行い、十一日は十二競技種目、七実践活動の合計十九種目に子供から高齢者まで、およそ一、九〇〇人が思い思いに快い汗を流し、交流の輪を広げました。

 

 

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。