教育福島0166号(1992年(H04)10月)-032page
教育センターから
基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究
−第5年次実践研究−
学習指導部
学習指導部では、昭和六十二年度から五年計画で、「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究」に取り組んできました。平成三年度はその最終年度に当たり、教科としては小学校体育で実践研究を行い、また五年間の研究の成果については要点をまとめて、研究の締めくくりとしました。ここでは、その概要を紹介します。
一 研究の趣旨
この研究は、学習指導の改善の視点から、基礎的・基本的な内容を身に付けさせる過程を通して、児童生徒一人一人の個性を生かし、伸ばす学習指導の在り方を実践的に追究しようとするものです。
二 研究の基本的な考え方
まず、「基礎・基本」を具体的に「学習指導要領における教科の目標・内容」としてとらえました。つまり、すべての児童生徒に共通に身に付けさせる、教科における基礎的・基本的な学習内容と考えました。
「個性の伸長」という時の「個性」については、児童生徒一人一人が持つ『よさ』ととらえ、この『よさ』に着目し、意識化させ、伸ばしていくことが、すなわち「個性の伸長」であると考えました。また、教科外の道徳では、「個性」を「その子らしさ」ととらえました。
児童生徒は、基礎・基本を定着させていく過程で、それぞれに個人差を発揮していくものと考えられます。その個人差の中から、一人一人の「よさ」や「その子らしさ」を見つけ、伸ばしていくことができれば、「基礎・基本の定着」に留意しながら「個性の伸長」を図ることも、可能となるのではないでしょうか。
なお、この研究の手法は、全国教育研究所連盟の共同研究テーマを先取りする形で実践したものでもあります。
三 小学校体育における実践(平野小4年)
授業構想として、次の三つの柱を立てました。
1) マット運動と跳び箱運動といった主運動と主運動を組み合わせ、異質グループにおける個に応じた練習の場を設定する。
2) 単元計画の中に、課題把握と解決、基礎・基本の定着、創作と発表による発展学習をそれぞれ位置付ける。
3) 「よいところカード」などで、自己評価、相互評価を行い、教師の観察評価と併せて児童一人一人の『よさ』を見つけ意識化させ伸長を図る。
このような構想のものに、六時間の授業計画を作成しましたが、その内容は図1の通りです。
また、児童の興味・関心・意欲を高め、連続技の準備のために、図2のような五種類の「コースカード」を用意しました。これは、児童一人一人の個人差に応じるとともに、自己決定させ、到達可能な目標への目的意識を高めていくためのものでもあります。