教育福島0166号(1992年(H04)10月)-039page

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自立通学をめざして

−社会自立への第一歩−

県立いわき養護学校

 

本校は、知的に遅れのある児童生徒が学習をしている学校で、昭和五十八年に県立初の通学制養護学校として開校し、現在124名が在籍しています。

従来の施設併設の養護学校と違い、すべての子供たちが自宅から毎日通学して来るのが本校の大きな特徴です。日本一広い市のいわき市全域と、隣接する町から通学し、片道二時間ほどかけて通学してくる児童生徒もいます。このため本校では、生徒指導の中でも通学指導には特別に配慮し、児童生徒の登下校における安全の確保に万全を期しています。

通学の状況については概ね次の通りです。一般バスを利用している児童生徒は四十五名、列車利用が十五名、徒歩五名、自転車利用が二名、委託バス利用が五十二名、自家用車利用が十八名となっています。(ただし、片道利用者も含めているため、一部重複しています。)

このうち、保護者の付き添いのない自力通学の可能な児童生徒は中学部、高等部の生徒を中心に四十名。(三十二%)おり、登校時には平駅前から、下校時には各学部の時間に合わせて出ている路線バスなどの交通機関を利用しています。また、自力通学以前の段階の児童生徒のためには「くじら号」と「かもめ号」の二台の委託しているバスが出ています。

通学は、ただ単に学校と家庭を往復するというだけではなく、障害を持つ子供たちが将来、社会参加・自立を図るための重要な第一歩であると考え、電車やバスの交通機関の利用を通していろいろな人たちとの出会い、公衆道徳や日常生活におけるルールを自然に身につけていくことが大切です。まさに社会との貴重な接点の場、生きた教材そのものであります。そこで児童生徒一人ひとりの障害の程度や性格・行動の傾向、通学距離や家庭的な諸条件など総合的に判断して自力通学へ向けて段階的にきめの細かい指導を展開するようにしています。

自力通学へ移行する際は、特に保護者との連絡を密にすると共に道路歩行の仕方、バスや列車など利用交通機関の行き先・時刻・乗降場所の確認、金銭の取扱い、緊急時の対応、電話のかけ方等、あらゆる項目をチェックし、練習期間を設けて学校と家庭との相互の連携を図り、ひとり通学の向上に努めています。また、担任や通学指導係も適宜、現場の指導等を重視し、登校・下校の通学状況を観察しながら安全な通学方法の確保に努めています。

こうした個別的な指導とは別に、小・中学部の生徒に対しては、年に二回校内交通教室を実施し、信号機の見方、横断歩道の渡り方など交通ルールや乗車マナーを重点的に指導しています。更に、近くの道路では実際に体験しながら、理解の定着を図っています。そして高等部の生徒は、社会見学など校外に出る機会をとらえ、実際の場面を通しながら、各種の交通機関を利用して職場へ通勤するための能力を養っています。

本校は今年で創立十周年を迎えます。平成三年四月に高等部が設置され、現在、一・二年生三十一名が毎日熱心に学習に励んでおります。学部目標は「働ける人づくり」を掲げ、作業学習を中核として職業的にも家庭的にも自立できるような人間の育成を目指しています。本校もやがて初の卒業生を送り出すことになりますが、ひとりでも多くの生徒が、可能な限り就労の機会を得ることによって、生きがいのある、充実した人生が送れるよう、進路指導部を中心にして職場開拓に努力しているところです。

 

駅前からバスを待つ自力通学の児童生徒

 

駅前からバスを待つ自力通学の児童生徒

 

学校の昇降口前から委託バスにのる児童

 

学校の昇降口前から委託バスにのる児童

 

 

 


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