教育福島0166号(1992年(H04)10月)-050page
ふるさと探訪
福島県指定重要無形民俗文化財
相馬宇多郷の神楽
旧相馬領内には、いわゆる大神楽が、ほとんど各集落ごとと言ってもよいほどに伝承されています。領内は、宇多郷、北郷、中郷、小高郷、北標葉郷、南標葉郷、山中郷の七つの郷に分かれていましたが、藩主が各郷ごとに郷社
として雷神社を勧請し、それぞれに大神楽を奉納させたためと言われ、この郷社奉納の風習を今も比較的よく残しているのが、宇多郷(相馬市)です。
宇多郷の郷社雷神社は、相馬市坪田にあり、各集落のものが、春秋の祭に、春は六月十七日、五穀豊穣祈願のため、秋は彼岸の中日に、豊作御礼として、奉納に参上します。相馬領内の青年にたちは、神楽に参加すると身体が丈夫になると信じ、その継承と奉納に努めてきたのです。
なお、「羽山籠りと木幡の幡祭」とともに、平成四年三月二十四日付けで県指定重要無形民俗文化財として指定されました。
「乱舞」
福島県指定重要無形文化財
羽山籠りと木幡の幡祭
前九年の役に、鎮守府将軍の源義家父子が、東北を支配していた安倍一族との戦に敗れ、木幡山に籠って戦勝を祈願したところ、雪につつまれた全山の樹木があたかも源氏の白旗に見え、逆に安倍一族が敗走したという伝説に因むとされる木幡の幡祭は、いわゆる羽山籠りに伴う行事です。
十二月の第一日曜日に行われる「幡祭」は、前述の伝説で有名な幡行列の外、前夜からの「お籠り」と「小宮参り」、「胎内くぐり」「食初め」の一連の成人式の行事が行われます。
源氏の白幡の伝説や養蚕の信仰がいっしょになって華やかな祭りとなっていますが、布は太古よりの神の依代であり、「胎内くぐり」は羽黒修験の行事にも類似のものがあり、もともと伝説とは別の、古色蒼然たる行事であったと思われます。
「胎内くぐり」