教育福島0167号(1992年(H04)11月)-007page

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黷発見し感動する。驚く、びっくりする。その作業とは一体どんなものなのか?

 

目に見えぬ事物への感動、それを発見し感動する。驚く、びっくりする。その作業とは一体どんなものなのか?

川端康成の名作に「雪国」の長編がある。彼が文学者として、どう素材に対し「驚きと発見」の目を光らせていたか、すこし並べてみよう。(傍線は筆者)

・国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。

・裸の天の川は夜の大地を素肌で巻こうとして、すぐそこに降って来ている。恐ろしい艶めかしさだ。島村は自分の小さい影が、地上から逆に、天の川へ写っていきそうに感じた。天の川の底なしの深さが、視線を吸いこんで行った。

 

私は何を書くかではなく、どう書くのかの一つの証しとして、雪国の一章を取り出した。文学の表現の恐ろしさをまざまざと見る思いがする。

現代に書かれ発表されている多くの文章の軽薄さは「事実をそのまま書く」、つまり何をに焦点が当っていて「どう書く」の「どう」と言う感動伝達力を忘却しているところに原因があるのだろう。「どう」には繰り返し申し上げるが、感動・驚き、新らしい視点感覚を養成せねばならぬ事を考えていただきたい。単なる事実報告書では困る。価値が全く無いのだ。その世紀を背負う人々の養成、その一つの問題点として……。

 

【筆者紹介】

藤村多加夫・ふじむらたかお

(菅野 謙三)

大正 十四年 福島市生まれ

昭和 十七年 福島県立福島商業学校(旧制)卒業

十八年 日本銀行入行(仙台支店)

二十一年 石田波郷に師事

二十二年 俳誌「野火」に参加

二十四年 日本銀行退行・稼業継承

二十八年 俳誌「寒雷」同人

二十九年 現代俳句協会会員

三十四年 現代俳句連盟設立「昿野」創刊・代表者

三十五年 東北俳句大会主催

四十四年 福島県文学賞審査員

四十六年 福島地方裁判所・同家庭裁判所・同簡易裁判所、調停委員

四十九年 福島県芸術賞受賞

四十九年 福島県俳句作家懇話会を結成、初代会長

五十年 福島県芸術文化功労者表彰

六十二年 東北地区現代俳句協会会長

六十三年 現代俳句協会幹事

平成 元年 最高裁判所長官表彰

三年 藍綬褒章

四年 福島県文化功労賞受賞

 

 

 


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