教育福島0168号(1993年(H05)01月)-033page

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○ 生徒自身が徳一の生き方についての疑問をもち、「奥州恵日寺」をもとに追求する。

○ 疑問の答えを班ごとに劇化する。

○ 徳一大師の生き方から学んだことについて郷土の方に話を聞く。

4) 授業の反省

「奥州恵日寺」が難解な文章であったために読破するのに時間がかかったが、生徒は疑問を熱心に追求し劇にして発表し合った。十二生徒は「徳一は自分の目指した本当の仏教に一直線に進んでいった。僕も入試に向かって一直線に進んでいきたい」と述べている。十二生徒はなかなか家庭学習に身が入らずにいたが、この頃から自主学習を熱心に行うようになった。(資料4)

体験入学・学校説明会、三者懇談を経て、ようやく進路選択が終わり、合格目指して最後の復習に力が入っているときであるが、Tのことが心配である。Tは一年生の頃から不登校の傾向が見られる生徒であるが、三年になって自力登校したのは修学旅行前と十二月だけである。進路については興味のある情報技術の専門学校に進みたいと考えている。意志が固いことを確かめ、受験した結果合格することができた。しかし、依然登校しなかった。全員そろって卒業式を向えることができるだろうか。ほとんどあきらめかけた卒業式当日。なんとTが一人で職員室に入ってきた。全員そろった卒業式。感無量の思いが胸に満ちる。もちろん生徒も感動を満喫した。

そして、運命の三月十九日。みごと全員合格。二十九名そろって新しい一歩を踏み出すことができた。

 

五 仮説についての考察

 

作業仮説にそって、生徒の変容を考察する。

(一) 人間愛の精神を基盤にして自らの意志で規範を守る生徒

授業の反省・道徳ノート・自己評価・実践の記録・道徳アンケート(資料5)から、規範の必要性を感じ取り、よりよい校風をつくろうとする心情が高まり、日常生活場面で最上級生として努力している生徒の姿が分かる。

 

資料5 道徳アンケートにみる生徒の変容

(二) 自ら目標を決め、その実現に努める生徒

 

(二) 自ら目標を決め、その実現に努める生徒

実践の記録・行事の反省・日記「りんどう」・道徳アンケート・授業の反省・道徳ノート・自己評価から校内文化祭・部活動・授業に自主的自発的に取り組んだ生徒の様子が分かる。また、進路についての心構えができ、自らの進路を主体的に考えるようになった生徒の変容の様子がよく分かる。

(三) 磐梯の偉人の生き方に学び・文化と伝統を伝承する生徒

授業の反省・道徳ノート・自己評価・実践の記録・道徳アンケートから、郷土愛の心情が高まったことが分かった。しかし、地域行事への実際の参加状態はほとんど変化が見られなかった。

 

六 研究の成果と課題

 

(一) 研究の成果

(1) 学級における指導計画に基づき三十五時間の道徳の授業を実践できた。

(2) 自己評価で「わりと、とても」と答えている生徒が多く、指導方法を工夫することにより充実感を感得させることができた。

(3) 生徒指導の機能を生かし、カウンセリング・マインドに努めることにより教師と生徒との信頼関係を確立できた。

(4) 家庭や地域社会との連携を図ることができた。

(5) 生徒に望ましい変容が見られた。

(二) 今後に残された課題

(1) 家庭と連携を図った実践の指導を行う必要がある。

(2) 地域社会での生徒の生活を把握するために更に地域社会との連携を深める必要がある。

 

 

 


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