教育福島0169号(1993年(H05)02月)-022page
開催、関東や県内各地からの参加者を迎えて初夏の風物詩に歓声をあげ、ホタルと自然を語り、地域での自然環境保護の推進について話し合った。
今年も幼虫を十一月初めに放流し週に一度カワニナを持って行き、観察を続けている。師走も半ば、冬ごもりに入るはずの幼虫は、地下水で水温が高いせいか、まだカワニナを追いかけていた。その幼虫も先日の雪にあわせて姿をかくしたようである。
人類は進歩したと言われるが、他の生物の生存を脅かす進歩が真の進歩と言えるだろうか。他の生物の生存を脅かす環境は早晩人類の生存も脅かすに違いない。いや、もうその段階にきていると世界の専門家は警告している。ホタルの言うように、「失うものの大切さ」は失ってからでないとわからないのだろうか。
心豊かな生徒の育成と体験学習が重視されている今、世界でも大変めずらしい種類と言われるゲンジボタルの棲める村づくりに参加し貢献できることは、二十一世紀に生きる生徒にとって、もっとも価値ある体験学習の一つと思われる。
(北会津村立北会津中学校教諭)
子供はおもちゃではない
大和田博行
私は以前、サッカースポーツ少年団を結成し、指導していたことがあります。自分で始めたことなので、何とか勝てるチームにしようとばかり考え、毎日暗くなるまで、技術的なことや体力づくりに重点を置いて練習をさせていました。
その結果、試合ではある程度勝てるようになりました。そうなると地区予戦でも勝てるようにしたいと欲が出て、今まで以上に高度なことを児童たちに要求するようになりました。知らず知らずのうちに練習も厳しくなっていたのでしょう。そのころ、五年生でレギュラーだったT男が、「膝が痛いので、練習を休んでいいですか。」と言ってきました。私は、できるだけがんばるようにと言って、いつものように練習させ、試合にも出場させました。T男は、レギュラーだという自覚からか、みんなと同じようにボールを追っていました。その後、膝のことを言わないので、私はすっかりそのことを忘れていました。T男が中学校に入学後、T男の父親に会った時、こう言われました。「息子は膝が悪くて、今、運動ができないのです。」この言葉を聞いた時、自分がこれまで自信を持ってやってきたことが、一挙に崩れていくように思えました。
これまでの私の指導は、ひたすら勝つことに終始していたのではないだろうか。児童たちは、果たしてスポーツを楽しんでいたのだろうか。私は、深く考えさせられました。
それから数年して、私は郷里に戻って来ました。私は、息子が知らない土地に一日も早くなじみ、友だちができるようにと願い、サッカースポーツ少年団に入れました。
監督さんは、スポーツ店を経営している方で、自分の仕事を投げうって、毎日指導に来てくれています。その様子を見ていると、児童たちにあまり具体的な練習方法については、指示しません。練習する児童たちをよく見ていて、一人一人に励ましの声をよくかけています。その結果は、試合でも児童が自分なりの力を発揮し、よい成績を挙げています。また、試合で負けても感情的に怒ったりせず、自分たちでどこが悪かったのかを考えさせているのです。
監督さんは、私たちに次のようなことをよく言っておりました。
「子供は私のおもちゃではない。指示したことしかできなくては困る。私は、サッカーも好きだが、それ以上に子供が好きだ。だから、こうして監督をしているのだ。」
私はこの監督の方針と指導法を心から支持し、試合の度に応援に出かけ、親同士の連携を深めています。
(鹿島町立鹿島小学校教諭)