教育福島0170号(1993年(H05)04月)-044page
指導計画の立案に当たっては、目標とともに、それを実現するために、どのような場を通じて、どのような内容で指導するかなど、指導内容を明らかにしなければならない。
1) 学習指導要領の規定を踏まえること
中学校学習指導要領は、進路指導の指導内容について、次のように示している。
○ 学級活動における指導
進路指導の中心的な場である学級活動の内容の「(3)将来の生き方と進路の適切な選択に関すること。」として、「進路適性の吟味、進路情報の理解と活用、望ましい職業観の育成、将来の生活の設計、適切な進路の選択に関することなど」、五項目の活動内容例(指導項目)を示している。
○ 学校行事--勤労生産・奉仕的活動--における指導
生活体験等、諸経験の不足が指摘されている生徒に、職業や勤労にかかわる啓発的な経験を得させることは、進路指導にとって今日的課題であるが、学習指導要領は学校行事の「(5)勤労生産・奉仕的行事」で、勤労にかかわる体験的な活動の教育的な意義、特に進路指導上の意義を示している。
○ 進路指導を通じての指導
進路指導にとって、学級活動における集団活動場面での指導と、進路相談を通じての個別指導とは、いわば車の両輪であり、進路指導は、両者の密接な関連を図りつつ、相互に補い合いながら進められるべきである。この点について、学習指導要領は、特別活動の「指導計画の作成と内容の取り扱い」で、「生徒指導の機能を生かすとともに、教育相談(進路相談を含む。)についても、生徒の過程との連絡を密にし、適切に実施できるようにすること。」と示している。
2) 「改善の基本的な視点」に即して指導内容の改善を図ること
各学校は、学級活動、勤労生産・奉仕的行事、進路相談などを通じて、どのような内容で指導し学校の進路指導の目標、あるいは各学年の進路指導の目標の実現に迫るのか、一層具体的に明らかにし、指導計画に盛り込む必要がある。中学校の進路指導の今日的な課題を踏まえて示した「指導の転換点」に則せば、それは、次のような指導内容となろう。
○「学校選択の指導から生き方の指導への転換」を図るための指導内容
ただ単に進学先を選択させるための指導から、生徒が将来の生き方を考え、自らの意志と責任で進路の選択決定ができるよう指導・援助するためには、一、二学年において、将来の生き方あるいはその選択にかかわる指導内容を系統的、発展的に取り上げ、生徒の進路探索を継続的に指導・援助することが大切である。
以下に示す、「将来の夢や希望を育てる」ことに始まり、自分なりの「進路計画を立案する」ことに至る指導の過程は、その一例(案)である(左の図)
○「進学したい学校の選択」に基づいて、「日ごろの学習の成果等」に基づく助言により、「生徒が選択決定する」指導への転換を図る指導内容
教師が、合格可能性に基づいて、受験先を選択決定する指導から、生徒の「進学したい学校の選択」に基づいて、「日常の学習成果などによる合格可能性」の助言と志望実現のための努力に対する援助を重視し、生徒が「自己の意志と責任で志望校を選択決定する」指導への転換を図る
「進路計画を立案する」ことに至る指導の過程(例)
進路の探索
将来の夢や希望を育てる
職業生活や社会生活など、将来の生活及び自己の特性について理解させ、自分を生かしながどのように生きてゆくか、現実的・具体的な来の夢や希望--目的意識--を育てる。
将来の生活
産業や職業の種類あるいは様々な職業生活・社会生活の有り様について、職業調べ、職場見学、職場体験学習及びそれらに基づく進路学習を通じて幅広く理解させる。
働く意義と喜び
働く喜びや辛さ、働きがい、あるいは職業・勤労の意義や役割などについて、職場見学、体験学習及びそれらに基づく進路学習を通じて考えさせるとともに、自分なりの見方、考え方を育てる。
自己の個性
人の個性及び、それを尊重することの大切さを理解させるとともに、自分の能力・適正、興味・関心、について自覚させ、将来の生き方や職業生活で、それを生かすことの大切さについて理解される。
学ぶ制度と機会
様々な職業とともに、それらに就くための資格や学習などについても理解させ、上純学校で学ぶ意義について考えさせ、学び続けるための制度と機会について知識を得させる。
上級学校の教育内容と特色
当面する進路の一つである高等学校、高等専門学校、専修学校及び、それらの学科、類型・コースの種類、そして、それらの教育内容やその特色などを、学校の調査や見学などを通じて理解させる。
進路計画の立案
将来の生き方の多様性とその多様な選択可能性についての理解及び自己の個性とそれを生かすことの大切さの理解などに基づいて、希望する将来の職業や、そのために進学したい学校・学科などを内容として、進路計画を立てさせる。