教育福島0171号(1993年(H05)06月)-007page
劇場で演出中の筆者
劇作、演出、出演多数。NHK朗読の時間出演多数。
日本演出者協会会員。日本児童演劇協会会員。
劇団新芸術代表。(社)日本劇団協議会会員(劇団として)
各地の中学校・高等学校で演劇指導、コンクール審査員歴任。
か悪い人間か判断がつきがたいというのは教訓的には足りないところがあるのかもしれませんが、俳優たちのバイタリティ自体を一種のメッセージとして感じとって頂ければ有難いのです。
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明治維新以降、日本の学校教育の中で美術と音楽は比較的早い時期に教科として取りあげられ成果を上げて来ました。それに比して演劇はひどく後れを取る事になりました。お手本やひな型を入手しにくく、指導教官を育成しにくかったという事情もあるでしょう。しかし深いところでは日本人の人格教育の中心になった儒教思想、それも封建的武士道とからみあった思想が、遊び戯れる事を蔑視し、「男はみだりに笑うものではない。一年に片頬ぐらいでいい」などという考えが抜けにくかったせいでしょう。折角歌舞伎そのほかの芸能が町民文化として根づいていたものを、なるべく町民意識と切り離す形での改良運動も出て、演劇を楽しくないものにしたきらいもあります。
数年前、英国のオールドヴィック劇場の若手演出家が来日した時、日本の多くの劇団が実施している学校巡回演劇公演を見て「英国でも見習いたい習慣だ」と言っていました。教科としての扱いがゼロである演劇を、年一回の鑑賞行事で、補って下さっている学校の先生方の熱意に敬意を表して筆をおきます。
【著者紹介】
中 城 まさお・なかじょうまさお
(本名 中城正男)
昭和 六年 東京府生まれ
二十五年 福島県立安積高等学校卒業
二十九年 東京大学法学部卒業
三十一年 『劇団文学座』に研究生として入座
三十四年 『東宝演劇部』所属
三十九年 自作自演『モノドラマ・ハムレット』が英国文化振興会推薦公演となる
四十六年 ポーランド演劇祭参加
『劇団新芸術』設立
文化庁助成を含め学校対象公演に力を入れ現在までに七千ステージ以上を実施
自主公演では話題作を演出
五十年 オーストリア演劇祭に自作『古事記』で参加
五十三年 小劇場『猿楽町空間』開設
平成 元年 養成機関『アクターズ・ステュディオ東京』開設