教育福島0171号(1993年(H05)06月)-034page
牛乳パックを使った「輪投げ」遊び
3 全校児童に、共に生き、学び合う意識を育てる交流行事
本校と養護学校の児童数の差が大きく、全校児童が養護学校の児童とふれあう機会は限られてしまいがちでした。
そこで、交流行事は、七夕音楽祭を中心とした学校行事の中で、全校児童が養護学校の児童と一緒に過ごす機会を設定し、学級活動との補完をねらいました。
交流初年度の音楽祭では、養護学校の児童に対する関心はありながら、緊張した雰囲気が漂っていました。
しかし、一年後には、養護学校の児童が来るのを楽しみにしている様子が、本校児童の会話や当日の準備に当たる姿などからうかがわれました。音楽祭が終わって養護学校の友達を送るときには、歌声と大きな拍手の渦が会場に広がり握手をしながら別れを惜しむ感動的な場面も見られました。ミニ父流で培った心のつながりが、このような形で表れるようになったのだと思われます。
交流行事部の取り組みには、他に「養護学校運動会・学習発表会への参加」「学年交流会」などがありました。
楽しいソフトボール
4 啓蒙活動
障害児理解を推進するためには、保護者への啓発が不可欠です。保護者の理解も一様ではないので、本校では、次のことを実践しました。
1) 授業参観・学年懇談・学級懇談の機会をとらえ、研究のねらいやこれまでの実践を紹介した。
2) 学校だより・PTA広報紙などに、交流活動の写真やそこから学んだ子どもの考えを紹介した。
3) 児童自身が、交流活動の様子を家庭で紹介することを促し、そのつど具体的な情報として伝えた。
六、研究の成果
交流を通しての児童の作文や行動から、次のような四つの段階を追って変容がみられました。
1 障害のある児童への関心から同情へ
交流が始まり、養護学校を訪問することにより、大部分の児童が養護学校の場所や、どんな人がいるか理解するようになりました。
特に、障害の程度、種類が一人一人違うという認識が生まれたことは、その後の障害児理解をさらに進める上で重要な役割を果たしました。
2 同情から友達へ(手助けをしなければならないから、一緒に活動するという意識への変化)
交流を進めてみて、四年生で障害のある子どもとの遊びに参加できず、自分のクラスの仲間だけで遊ぶことが少なからず見られたことに気づきました。そこで、五年生では事前の学級活動で、共に楽しめる遊び方を十分に話し合わせたことで、本校児童が積極的に補助役にまわる姿が見られるようになりました。養護学校の児童一人一人をよく見つめ、「親切にしたい」という気持ちを持って考え行動できるようになりました。
3 相手の立場に立って考えることのできる友達へ
はじめは、障害のある友達の気持ちを考えず、無理に仲間になろうと、遊びに誘ったりする姿が見られましたが、交流が深まるにつれその姿が少なくなりました。相手のよさを認め、感心する言葉をつぶやく場面も出てきました。ようやく「相手の立場に立って考え、相手の望む親切な行動をする」というようになったといえました。
4 思いやりを身近な友達へ
本研究の目的である、障害児理解を通して、思いやりの心を育てることができました。
今までは、思いやりとはどんなことかを見据える機会が少なかったのですが、養護学校の児童との交流体験や道徳部の「しあわせ運動」などを通して、身近な友達にも思いやる心が児童の中に育ってきて、お互いの良い面を伸ばす条件が整ったようです。