教育福島0172号(1993年(H05)07月)-016page
ていく必要がある。
(1) 児童生徒のよさを大切にした道徳教育の計画
各校で作成される道徳教育諸計画は、学校教育全体で行う道徳教育や道徳の時間の指導の羅針盤となるものである。全教員が参画して作成するとともに、各校の道徳的課題を十分に見据え、解決の方策を吟味したものでなければならない。
〈作成上の留意点〉
ア 児童生徒の実態や地域の実態については、よさを十分に把握し一層、伸ばすような視点を盛り込むこと
イ 地域性、学校規模、伝統や校風に着目し、学校の独自性を尊重した道徳教育となるよう配慮すること
ウ 児童生徒同士や教師と児童生徒の豊かな人間関係を醸成してよさの尊重や認め合いが日常的に行えるよう配慮すること
エ 教師は、児童生徒の道徳性の変容の傾向を捉え、よりよく生きようとする児童生徒の努力を評価し、人間的成長を見守ること
オ 道徳教育における家庭や地域等との連携は、以前から重視されているが、学校週五日制の導入を考慮してそれぞれの教育力を一層充実させていくこと
(2) 豊かな体験による指導
道徳教育における豊かな体験とは豊かな心の育成にかかわる体験であり、道徳的価値を内面的に自覚したり、行為として表すことのできる体験である。
児童生徒は、学校生活の中の様々な体験のなかでたくさんの道徳的問題や課題に直面する。それに豊かな反応して主体的に解決しようと考えたり判断しようとしたりする内面的な心の動きが、道徳性を育むことになる。
〈指導上の留意点〉
ア 学校教育の中で計画される豊かな体験は、様々なねらいを持っている。教師はその体験について、道徳の内容の四つの視点との関係からどのような支援が可能か十分に検討しておくこと
イ豊かな体験の中の道徳的問題や課題については、道徳の時間の補充、深化、統会の機能を生かした指導に心がけること
ウ 担任は、児童生徒が学級で年間を通してどのような体験をするのかを構造的に把握し、道徳的実践の場と機会に偏りがないように配慮すること
(3) 内面的な力をつける指導
この指導の中核となるのが、道徳の時間の指導である。道徳の時間に学習する道徳的価値については、子供たちはこれまでの生活経験から何らかの問題意識や課題意識をもっている。そのこととかかわりをもたせながら、自分なりの気づきや思いを豊かにして道徳的価値の自覚を深め道徳的実践力を培っていけるように授業を組織していく必要がある。
授業の構成としては、指導過程の基本型を柔軟に考えその一部を事前や事後指導として扱うなどの工夫が少しずつ実践化されている。アンケートや意識調査を活用する試みや資料とその背景などを魅力的に語っておくことなどは道徳的価値そのものへの興味・関心を高める方法として有効である。このように、児童生徒と道徳の授業との結びつきを豊かにする方法は、さらに工夫していく必要がある。
〈指導上の留意点〉
ア 補助資料などを通して中心資料への興味や関心を高め、描かれている場画に心動かし、学習する道徳的内容に対する課題意識を喚起すること
イ 展開部分においては、資料への的確で深い「共感」を引き出すこと
ウ 価値を内面的に自覚させる段階では、多様な価値意識を引き出して自分の感じ方や考え方と比べてみる学習を通して価値を内面的に感得させるようにすること
エ そのためには、資料の提示に十分な工夫を凝らすこと
オ 終末の段階では、一時間の学習によって高められた価値意識や実践意欲が持続するように配慮すること
(4) 環境による指導
児童生徒の道徳性の発達にとって、環境の影響は予想以上に大きい。児童生徒の学習意欲や思考力、判断力、表現力も環境によって左右されると言っても過言ではない。心の教育である道徳教育にとって望ましい環境を作ることは、心に好ましい刺激を与えたり、道徳教育の日常化を図ったりする上で大切な役割をもっている。
〈指導上の留意点〉
ア ヒドゥンカリキュラム(隠されたカリキュラム)の重要性が示すとおり、「教師の後ろ姿」や「教師の言葉かけ」など日常生活の何気ない小さな教育活動の積み重ねが人的環境の基本であること
イ 教師との信頼関係や学級の支持的風土作りなど豊かな人間関係を熟成すること
ウ 一般的な環境の充実・整備とともに掲示などを通して、児童生徒に実践への意欲を喚起し、自分自