教育福島0172号(1993年(H05)07月)-033page
様化している傾向もみられる。
一方、幼稚園教育の内容や方法についての理解も十分になされず、次のような状況もみられる。
○昔からのイメージのままの保育
○計画した活動をさせていく保育
○遊びという名を借りた放任保育
そこで、幼稚園教育の目的や基本をしっかりと捉え、幼稚園教育の在り方を正しく認識していくことが課題であると考える。
また、社会の変化の中で、幼児期にふさわしい教育を実現するためには、家庭や地域から切り離された存在ではなく、相互に理解を深め、家庭や地域に開かれたものになるとともに、社会や地域が求めるものを視野に入れながら教育を進めることが必要となってくる。
3 幼稚園教育の基本
幼稚園は一人一人の幼児が楽しく充実した生活を展開する場でなければならない。幼稚園教育は幼児の生活の自然な流れの中で、周囲の環境に自ら興味をもってかかわり、様々な活動を展開する中で得る直接的な体験を積み重ねて進められる。
今、学校教育の中では「新しい学力観」がさけばれ、学校教育全体が新しい方向へ大きく変わろうとしている。
学校教育のスタートの時期である幼稚園教育でも、一人一人が自分らしさを発揮して、意欲をもって取り組む主体的態度や思考力・判断力・表現力などを育てるための基礎づくりの時期であることを踏まえて、その教育の在り方を考える必要がある。
幼稚園教育は、幼稚園生活を通して一人一人の幼児が発達に必要な経験を自ら獲得していけるように援助することである。一人一人の育ちをどう援助するかを考えたい。
4 指導の充実
幼児が環境にかかわり、主体的な遊びを通して健全な自立を促し、集団生活の中で人間に対する信頼感、物事への興味・関心、運動能力の基礎となる力を養うためには、発達の特性を捉え、直接体験を充実させる指導法の工夫に努めなければならない。教師中心の効率的な指導ではなく、一人一人の幼児が充実した日々を送り、遊びを通して経験を積み、心の世界を広げ、考え、挫折や葛藤を自分の力で乗り越えていけるような場と機会が得られるように生活の流れを大事にした保育をしなければならない。
(1) 一人一人を理解する
個々の生活の流れを思い起すことによってその姿を理解することができる。日々の保育記録により意識化し、その意味を自分なりに解釈したらその妥当性について検討しながら理解を深めていく。
(2) よさを認め生かす
一人一人の幼児がどのような発達の流れの中で今の生活・活動に取り組んでいるのかを捉え、その流れをしっかりと歩んでいけるようにしてやることが大切である。
発達する姿がそれぞれ違っていて興味や関心のもち方も違っている幼児に対して、教師中心の画一的な指導が行われれば、その幼児にとっての大事な経験の機会が失われ、意欲を失わせてしまうことになりかねない。幼児一人一人のその子らしさ、特性を十分に発揮できるような状況を作り出していくことが、一人一人の幼児を生かす援助につながっていく。
(3) 共感的な理解
幼児は自分が誰かに受けとめられ見守られているという安定感の上に立って、自分の活動を広げ周囲に働きかけながら自己を形成していく。
一人一人をかけがえのない存在として認めることから一人一人を生かすことが始まるが、温かく見守るということは、幼児を信頼し、期待をもって見守ることである。一人一人
の心の動きに敏感に応える教師でありたい。そのためには、生活を共にしながら感じとっていくことが大切である。主体性を大切にすることは、放任することではない。教師がどのようなかかわり方をしているかも振り返ってみる必要がある。
(4) 家庭・地域との連携
保育の場を地域に広げ、自然や文化、人材を環境に取り入れ、人々の生活にふれる機会を設けることや幼稚園を親子のふれあいや交流の場、地域の幼児教育センター的役割を持たせることなどの取り組みも必要になってくる。
また、小学校との連携が図れるような機会を設け、発達の連続性を踏まえた教育となるようにしなければならない。
どのよう場合でも、「幼児にとって何が必要か。何が大事か。」を考えながらすすめたい。
今後、幼稚園教育の充実を図っていくためには、保育の場を通し、具体的な場面を取り上げ、環境構成の工夫、教師の援助の在り方等について、幼稚園教育要領の趣旨を生かすよう研究を深めていくことが大切である。