教育福島0172号(1993年(H05)07月)-037page

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の在り方について追究しました。

四 研究の実践(小学校四年の例)

ここでは、「所属と愛情」を高めることに中心を置いた指導援助の実際を取り上げます。

六つの要点にかかわる意識調査の結果、互いのよさを認め合い、共に高まり合おうとする意識の低いことが明らかになりました。このような学級の実態から、実践の視点を十二の基本的対応の

○互いに認め励まし、協力して活動することによって、達成感・自己存在感を持たせる。

○温かい触れ合いのある学級づくりに努める。

に当て、「所属と愛情」を満たすとともに、「安全」と「自己理解」の意識を高めることも加味して実践しました。

検証授業、道徳「飛べない蛍」での主な指導援助は次の三点です。

1) 役割演技により、児童の持ち味を十分に発揮させる。

2) 登場人物の気持ちをとらえる話し合いの過程で、相互の気持ちを体験的にとらえさせる。

3) 一人一人の考え方の違いを肯定的に受け止め、それぞれのよさに気付かせる。

特に、相互支持的なかかわりを最も大切にし、気付かせたり、促したり、褒めたり、励ましたりすることばかけに留意しました。

 

蛍の気持ちを役割演技で表現

 

蛍の気持ちを役割演技で表現

 

また、道徳の授業の実践を契機として、学級集団への指導援助を継続してきたことにより、一人一人が自由に発表するようになると同時に、相手の意見に耳を傾けるようになりました。事後の意識調査結果を見ても「所属と愛情」にかかわる意識が事前よりも高まり、「安全」「自己理解」に関した意識も良い方向に変わっていきました。相互受容を基盤にした学級づくりが、一人一人の存在感を高め、相互主体性を育む結果になったと考えます。

五 まとめ

三年間にわたり「開発的な指導援助の在り方」について研究してきましたが、その結果は次のようにまとめることができます。

 

1 開発的な指導援助の基盤は、教師と児童生徒及び児童生徒相互の望ましい人間関係である。

2 開発的な指導援助は学校教育の全領域にわたって充実させることが必要である。

3 六つの要点に基づく指導援助は、開発的な指導援助のために必要不可欠なものである。

4 開発的な指導援助は全ての児童生徒を対象とし、教育における指導援助の基盤に置くものである。

三年間の研究は一応終了しましが、今後はこの指導援助を全校的視野に立って継続し、さらに、深めていくことが望まれます。なお詳細については、平成四年度の福島県教育センター発行の「研究紀要」をご覧ください。

 

M男の表現を中心にして話し合いを深めた場面

 

M男:なさけないなあ、早くしろよ。

C1:えーっ。そんなこと言ったら、気ばかりあせるよ。

C2:悲しくなってしまう。

C3:M男君は、つめたいなあ。

C4:やっぱりな。M男らしいよ。

T:M男君は、きっとこんな気持ちだったと思うよ。

なさけないなあ…そんなことじゃだめだ、しっかりしろよ、あきらめないでもっとやってみたら…

早くしろよ…つかまってしまう、大変だよ…

M男君は、本当はとても心配しているから気をもんでいるんだね。

 

M男は問題行動が多く、孤立状態にあった子ですが、肯定的な見方でM男の表現を受け入れ、話し合いを深めてきました。その結果M男の心を開かせるとともに、M男自身も気付かずにいた自分自身のよさに気付くことになりました。

 

 

 


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