教育福島0173号(1993年(H05)09月)-028page
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試合に臨む心構えの四つの言葉の最初の「あ」を指します。
ある日のこと、部員たちにこの話をしていたらレギュラーではない生徒が『先生、勝つためには四つのあだけでなく、五つのあです。』と言い出しました。なんだろうと考えてみましたが、どうしても五番目の「あ」がわかりません。そこで聞いてみたら『部員全員の力をあわせることです。』との答えが返ってきて、私はドキッとしました。一番大切なことを忘れていたと思いました。試合をする人だけでなく、全員が力を合わせて練習し、試合では心を一つにして応援しなければ、なかなか良い結果は得られません。部活動の究極の目標は、己に打ち克つことを体験させることだと言いますが、苦しい練習に耐え、プレッシャーに負けない自分をつくりあげるためには、仲間の応援・励まし・手助けが不可欠なのです。個人の成長のためには集団の力が必要なのです。お互いに支え合い、競い合う望ましい集団をつくりあげることが部活動指導の第一歩だったのです。
このことを思い出させてくれた去年の子供たちは、県北大会でもう一歩のところで負けてしまい、県大会に出場することはできませんでした。しかし、自分たちが果たせなかった夢を一、二年生に託すため、夏休みや卒業してからもよく部活動に顔を出し、下級生の練習相手をしてくれました。その思いが通じたのか、今年はどうにか県大会に出場することができるようになりました。今、練習している部員だけでなく、卒業生や保護者の方も含めて、力を合わせることが大切だったのです。
現在、本校では頭髪問題を機に、校則見直しを進めています。その基本精神は、生徒一人ひとりに中学生らしさを追求させるとともに、生徒に決めさせてよいものは、生徒自身の手で決めさせていく過程を通して生徒の自立を図るということです。色々な問題はありましたが、どうにか頭髪については決着をみることができました。教師の理解と保護者の協力なしにはできなかったことなのですが、それよりも、生徒への信頼感が一番大切なことも学びました。
その後、半年程たちますが、子供たちは自信をもって学校生活を送っているように見えます。生徒と生徒、生徒と教師、教師と保護者、みんなの力を合わせて、よりよい校風づくりに励んでいるところです。
(霊山町立霊山中学校教諭)
心の師
お二人のS先生との出会い
齋藤紀子
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何と温かく優しい方なのだろう。
大学入学後、間もなく開かれた寮の新入生歓迎会で、初めてS先生にお会いした時の印象である。背筋をピンと伸ばし、物静かに話されるS先生にすっかり魅了されてしまった私は、「この先生から学びたい」という思いで、家庭科の副免専攻を決めたのである。
以来、S先生は、顔を合わせるや必ず「どう、お元気だった?」と優しく声をかけてくださった。そんなS先生には、どんなことでも話さずにはいられなかった。きっと、学生であった私たちの話をうなずきながら、じっと聞いてくださったからであろう。
今日会えた縁に感謝するという先生のお考えが、多分そうさせたのであろう。とにかく一人一人を大事にして、常に前向きに、大きく私たちを導いてくださった。私たちはいつも、安心感に満たされていたように思う。教官と学生の関係をはるかに越えて、出会いの大切さを身をもって教えてくださったS先生が、教師となった自分の心の中にいつも存在している。教師の原点として。
もう一人のS先生とは、十四年前に行った海外旅行で知り合った。静岡出身のS先生が、はるか遠くカナダの地で入れてくださった日本茶の味は格別であった。それが縁でずっと今も親交が続いている。
S先生の最後の勤務校は、座席表とカルテで有名な静岡市立安東小学校だった。それで、私たちの学校からも何度か研修に出かけた。その度に授業に対する情熱や、私たちへの広くしかも温かな心配りに接し、とても胸が熱くなった。
さらに、一昨年の十一月、我が校のささやかな研究公開の日には、静岡から駆けつけてくださったS先生。突然のことでただただ驚くばかりの私たちを前に、「忙しいでしょうからまたね。みんな頑張って!」と、沢山のお土産を置いてあっという間に帰ってしまわれた。何というエネルギーの持ち主なのだろう。
退職された今でも、子どもたちの元気な声を聞くと授業がしてみたく
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