教育福島0176号(1994年(H06)01月)-011page
(2) 研究内容・方法
省略
四、研究の実際
〈一〉各視点に基づく実施
視点一の実践[事例]題材「作文ノート」
観察したことを簡単な文章でスケッチすることをねらいとして、国語の時間に外を眺め、黙って耳をすませた。雨の音、小鳥の声、時計の音、様々な音が聞こえた。子どもたちの目を雨に打たれるチューリップに向けさせ、自分だけに聞こえた声をノートに書くよう提案した。
T「チューリップはなんて言ってるかな。」
C「あ、聞こえた、聞こえた。」
ほんの五〜六行の言葉のスケッチ文を行がえによって詩の表現に近づける。詩の表現の導入段階での指導には有効な手だてである。[事例]発見カードの活用
子どもたちは、興味関心を示した活動であっても、後で想起させてみると意外に忘れている場合が多い。
より印象的に、より興味深く、より意識的に見てほしいとの願いから、「発見カード」を活用した。これは五感を働かせる指導を通して、季節の変化や身の回りの動植物の様子などに気づかせることがねらいである。
時間・空間を意識させた観察の場を意図的に設定することは、自然の微妙な変化を感得する心を養う手だてとして有効である。
視点二の実践
[事例]はじめての習字
初めて教頭先生に毛筆を習う日、子どもたちは緊張の面持ちながらも期待でわくわくしている。
授業後教室に入ると、おとなしいY男が顔や手を黒く汚しながら、初めて書いた「三」の字を得意げに見せに来た。帰りの会の「ニュース」でもその話題で持ちきりになる。さっそく、「はじめての習字」という共通の題材で詩の創作に取り組む。
T「初めて筆を持ったとき、紙に書くときどんな気持ちだったか、よく思い出して書いてみよう。」
これは、心の動きをそのまま言葉で表現させ、感動体験即表現というタイミングを逃さない有効な手だてである。
[事例]シャボン玉
説明文「シャボン玉の色がわり」の学習の中で、シャボン玉の色の変化は、一定であることを学んだ。子どもたちは、本当に「青、赤、黄」の順番で変化するのか、とても興味をもった。教材文に書いてあるとおりの材料を用意し、さっそく確かめる。
T「シャボン玉がふくらんでいく様子をよく見よう。どんな色や形になるかな。」
C「シャボン玉がぐるぐる回っている。あらしみたい。」
C「シャボン玉の中に、先生と美香ちゃんが見える。」
色の変化だけでなく、形の変化や遊ぶ様子にも目が届く。
その後、驚いたこと、発見したことなどを話し合い、自由に詩的作文を書かせる。形式にこだわらず感じたことが素直に表現されていることを重視した結果、その子なりの「光る言葉」が目についた。
単なる知識のみでは表現活動に結びつかない。体験することは表現を豊かにする手だての一つである。視点三の実践
[事例]「詩の広場」(授業)
資料1 発見カードを使った題材探し
資料2 詩「はじめての習字」
【特選】
はじめての習字
福島県安達町立下川崎小学校 三年 鹿野 恵
はじめてふでをもった。
紙に書くとき、
「ギューギュー」
と音がした
きんちょうしてけど、
がんばった。
きょうとう先生に
うでをつかまれた。
何をするのかな、
びっくりした。
でも、
うまく書けた。
「はいるところがうまいね。」
とほめられた。
うれしかった。
きょうの習字はおわり、
もうおわったのかつまんないな。
もっとやりたいな。
【ひょう】ふでをつかうのはきもちがいいものね。先生にうでをつかまれてびっくりしたというのが、こころに残る。とてもいい。