教育福島0176号(1994年(H06)01月)-013page

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させたりして、表現のおもしろさに気づかせた事例(省略)〈二〉創作活動の基盤となる、友達の表現を認め合い励まし合う支持的な雰囲気のある学級づくり[事例] 私の詩が歌になった

〜学習の遅れがちな児童の変容〜

学習で遅れがちなK子は、理解するまでに時間がかかるが、どんなに難しい問題でも決して投げ出さずに頑張る子どもである。そのK子が祖母と一緒に作った詩「かいこさま」がコンクールで入賞し、それが励みになった。また、つめを切ることを指導してもそのまま登校することの多かったK子が、きちんと切ったつめを見て作った詩「つめ」は、M新聞の作品欄に掲載され、歌になってテープが送られてきた。詩の入賞を機にK子の学習意欲が増し、発表力、表現力が向上した。[事例]より豊かな表現を求めて

〜詩から作文へ表現が高まった児童の例〜

学年のねらいである「要点や段落をおさえて文章を書くことができる」子どもには、さらによりよい表現を求める。H子は、本が大好きで表現力の豊かな子どもである。これまでも母親との触れ合いを題材にしたユニークな詩や作文を多く書いてきた。そのH子が、父親の子どもの頃の通信簿を祖父から見せてもらったことをきっかけに、父親を観察し「お父さんのつうしんぼ」をつけてみたいと思うようになった。そのため、「顔やこわさ、仕事」等観察のポイントを与えて注意深く見させ、それを詩に表現させた。この詩の指導にあたって、書くことの基本である「取材」を十分にさせたことがH子の表現意欲を高めた。「もっともっと書いてみたい。」「ここの文を書き直したい。」というH子の豊かな思いが、結果として詩から作文へと発展し、見事文部大臣表彰に輝いた。

詩で育まれた感性や表現技能を生かして、長文による個性豊かな表現にまで高めることができた例である。[事例]互いの表現を認め励まし合う学級

〜詩「うでずもう大会」の推敲を通して〜

これまでの指導では、比喩表現や体言止め、連などにこだわってしまったため、その子の個性を消してしまうような推敝を求めてきた。

この反省から「うでずもう大会」の詩では、子ども達がお互いの詩を読み合い、工夫しているところや直したほうがよいと思うところに印を付ける方法を行った。同じ表現について意見が分かれたり、自分の書いた言葉にこだわる子どももおり、活発な推敝の時間だった。この活動の中で、子ども達の「詩を読む力」が育ってきていると感じた。

また、朝の会で「詩集ノート」から気に入った詩を発表し合うことによって、友達の表現のおもしろさや物のとらえ方を認め合うようにしている。

子ども達の表現のよしあしは、大人である教師がよいと感じた表現よりも、子どもどうしで分かり合う表現で決まるとも言われる。詩を評価すること、教師が推敝してやることについては、さらに研究を深めていく必要があると感じている。〈三〉年間指導計画(作文・詩)の

作成について

これまでの実践の成果として、学校教育目標との関連から、表現することの楽しさを味わわせながら表現する力の育成を目指した作文・詩の年間指導計画を作成した。

五、研究の成果と今後の課題

○ 各視点に基づく実践の結果、自分らしさを工夫し、よりよい表現を求めようとする児童が多くなり、好ましい変容が見られた。特に、発見カードを活用することによって、五感を働かせて事象をとらえようとする目が養われ、生活や体験、感動を積極的に表現しようとする「生きて働く表現技能」が獲得できた。

○ 各視点が有効に働いたのは、表現活動とともに支持的な学級集団づくりにも配慮し、心の開放を図ったためである。詩を読み合い、お互いのよさを認め合う詩作活動を通して、個性が尊重され、自己表現に自信がつき、他教科においても学力の向上につながった。

○ 現在使用されている教科書等による学習指導計画に基づく表現活動だけでは、豊かな表現に結びつく「豊かな感性をもつ子ども」にまで育てることはむずかしい。

感性を育む場と時間を保障し、表現活動の日常化を図れるように指導計画の作成と改善にさらに努めていきたい。

○ 点数化の困難な「表現領域」の評価は、新しい学力観で唱える「その子のよさを生かす評価」として大切な課題である。

推敝指導においては、自分の詩を振り返り、友達のよさを認め、励まし合う自己評価や相互評価の活動を通して、児童一人一人の伸びようとしている芽を共感的に理解しながら支援する手だてをこれからも研究していきたい。

 

 

 


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