教育福島0176号(1994年(H06)01月)-014page
算数科において
自力解決できる児童を育てる指導
−ティーム・ティーチングを生かして−
いわき市立小名浜東小学校教諭
飯塚一雄・片寄知哉・鵜沼敦子・丹 美枝
一、研究テーマ設定の趣旨
1 本校の教育課題から
本校では、「進んで学び考える子ども」を教育目標の第一に掲げて、日々の実践に取り組んでいる。ティーム・ティーチング(以下TT)も学年が一つのスペースという本校の教育環境との融合によってより効果的な教育実践ができると考える。
また、校内研修での算数科の研究から、児童自身が自分の力で自分なりに問題を解決していくことが、新しい学力観にもとづく学習だと確信できるようになった。
2 算数科における児童の実態から
高学年の算数科指導では、数量、図形などについての基礎的な知識や技能の有用さが分かり、進んで活用できることが重要である。
しかし、前学年までの達成度に差があり、興味関心や学習方法、生活経験的背景などの個人差も大きいのが現状である。様々な抵抗から思うように自力解決できない児童や、学習内容を十分に理解し、一斉授業の中では待つ時間の多い児童もいる。
そこで、学年三学級に四人の教師という私たちのティームとしての配置を、算数科における援助指導の中で生かせば、今まで、「やりたくてもなかなかできなかった教育実践」ができると考えた。
二、研究仮説
1 仮説
個人差が大きい算数科において
1) 前提テストを生かした計画
2) 算数カルテでの援助をいかした指導
3) 形成的テストでの学習へのフィ−トバックを生かした評価の三点に着目したTTによる指導をすれば児童は自力解決ができるようになるだろう。
2 仮説の限定
TTも、計画−実践−評価−のサイクルがスムーズに流れることによって初めてその機能を発揮する。つまり仮説の1)2)3)は前提テスト、算数カルテ、形成的テストという言葉により分類されてはいるが、それぞれの関連は深く、互いの機能を補充し合い効果を高めあう関係にある。
1) 前提テスト
児童一人一人が既習の知識理解・技能をどの程度保持しているかを探り、欠落部分については補充指導すれば、単元の学習に入る前にどの児童も同じスタートラインに立てるような援助となり、自力解決をめざすうえで効果があると考えた。
また、前提条件への意識を呼び起こし、導入への意欲づけを図るという情意面での効果も考えた。
そして、結果によっては、補充指導を計画の中に位置づけることで、さらに効果が上がると考えた。
2) 算数カルテによる援助
本時の学習で習得したことを使って解くことのできる問題を一問与え理解の度合いや技能の確実さを探りづまずきに対しては、その場で指導する即効性をもつものである。
児童にとっては、自分のつまずきを知り理解をより確かなものにする手だてとなり、教師にとっては、つまずきの傾向から指導の手だてを修正したり、個に応じた援助のあり方を考える材料となる。
3) 形成的テストによる学習へのフィードバック
一単位時間、または二〜三時間を単位とした中で形成的評価を実施することによって学習内容の一人一人の理解度を探ることができる。個のつまずきについては個への援助指導やフィードバックを、全体的なつまずきととらえられる部分については一斉による援助指導やフィードバックを考えた。
4) 自力解決
算数科の教科の特性や五学年の到達目標、児童の実態から、「自力解決できる児童」の姿を、次のようにとらえた。