教育福島0178号(1994年(H06)04月)-007page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

【著者紹介】

 

國井利泰・くにいとしやす

 

一九三八年 東京生まれ

一九六二年 東京大学理学部化学科卒業

一九六七年 同大学院理学系研究科化学専門課程専攻博士課程修了 理学博士

一九九三年三月まで

東京大学理学部情報科学科教授

現在 会津大学学長

同コンピュータ理工学部教授

 

これまで発表した論文・著書多数。その多くが学会で高い評価を得る。カリフォルニア大学バークレー校客員教授。米国のIEEE,CG&AやSpringer Verlag刊The Visual Computerなど定評のある学術誌の編集長や編集委員もつとめ、コンピュータ科学分野の国際的リーダーとして知られる。

 

「科学と技術の有機的併設」である。これは、明確に保ち、むしろ一層推進する必要がある。会津大学では、科学技術の車の両輪的運営を制度化し、コンピュータ理工学部を実現した。イギリスでのこの科学と技術の両者の分離が、イギリス産業の衰退の遠因となったことはよく知られている。例えばOxford大学やCambridg大学などの、一流と見なされる大学には工学部は設置されず、社会的により低い位置付けの大学として、別途一連の工科系大学群が置かれた。

ところで、教育のあり方については、社会の激変と地球規模のグローバル化の時代に正面から対処できる人材育成と云う面も、欠かせない。そこで、手に独自の高度実務能力を備えるだけでは、不十分である。時流に流されず、同時に世界の相異なる文化の良さを活かしてより高次のグローバル文化を構築するための、確たる哲学、思想、信念、誠意と云う、人格面での高い資質も不可欠である。それでこそ、国際的信頼が得られる人材となる。

このような人材の育成には、誠実な人格形成教育法と個性を引き出し発展させる教育法の研究開発が必要となる。それは、それに相応しい場所を必要とする。利益と出世を主に追い求める土地からは、そのような教育が育ちようもない。その点、頑固なまでの実直さを県民性とし、そのような県民性を備えた風土と心を「うつくしま、ふくしま。」と愛でる福島県は、打って付けである。その中にあって、尚学と誠実を旨とする会津は、更に彩りを添える。人材育成のための大学設置場所として、理想的である。

プロフェッショナル養成のための教授法とカリキュラム、豊富な対話型教材、教育効果実測法の研究開発自体が、実は誠実な人材を必要とする。自分の研究成果を稼ぐという気持ちだけの教員からも、いわゆる「……でも……しか教員」からも、このような労多くして自分への利益から遠い行為への貢献は、まず期待できない。

国際的プロフェッショナル教育実現のために、会津大学では教員を国際公募した。世界十四ヵ国から教員陣が集った。会津大学では、良くない事はまず全て他人のせいとするカルチャーから、良くない事は自らの不徳の致すところとするカルチャー迄、世界のカルチャーがほぼ全部揃って居る。正に国連のようで、壮観である。良く分かるのは、激動の地から来た教員ほど、どのような人材が今国際的に求められているかを、心の底から理解してくれているという一事である。私のささやかな夢である、会津大学での、誠実な国際的プロフェッショナルの育成も、このような教員ほど、ストレートに理解し、支援してくれる。思えば、会津も、そのような地で有った。

福島県の教育界にこのような現実と夢を報告し、結びとする。

 

日仏ワークショップでの國井学長による基調講演

 

日仏ワークショップでの國井学長による基調講演

(1993年12月会津大学にて)

 

提言

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。