教育福島0178号(1994年(H06)04月)-008page
特集
道徳教育の充実
●新しい学力観と道徳教育
●(研究実践)平成4・5年度研究指定校における実践
●(特別企画)地域ぐるみの道徳教育紹介
−義務教育課−
本年度は学習指導要領が全面実施されて、中学校で二年目、また、小学校においては三年目を迎え、それぞれその趣旨の実現に向けて、新しい学力観に基づいた教育活動の更なる取組みが求められる。
新しい学力観に立つ教育は、道徳教育が本来目指してきたものであり、児童生徒自らが自分のよさや可能性を生かし、生き方や考え方を主体的に身に付けることができるよう教師自身に道徳教育に対する指導方法を再認識させるものである。
各学校では、自校の道徳教育上の課題解決を図るとともに、豊かな心を育てようとする特色ある実践がなされてきているが、さらに、児童生徒の心にひびき、心をたがやす道徳教育を推進するために、次の点から改善を図っていくことが大切となる。
○ 「新しい学力観に基づく道徳として期待する学力とは何か」を明確にし、学校教育活動全体の中で、多様で弾力的な指導を工夫する。
○ 道徳の時間の指導がやや固定化しがちであるので、児童生徒が興味と意欲をもって主体的に取り組む指導を工夫する。
○ 児童生徒の内面に根ざした道徳性の育成を図る豊かな体験の場の設定について見直しを図る。
一、新しい学力観と道徳教育道徳教育は、児童生徒自らが道徳価値の大切さに気づき、内面的な自覚を図るとともに、それを自ら追求しようとする意欲や態度を育むように支援することである。
つまり、新しい学力観を根底で支えるのが道徳教育であるといえる。
(1) 道徳として期待する学力
道徳における学力とは、道徳的心情、道徳的判断力、道徳的実践意欲や態度を培い、自らの価値体系を再構成し、ふくらませていく資質や能力といえる。
自らの価値の再構成は、生活する場すべてを通して行われ、それを活発化するためには、特に道徳の時間の指導が工夫されなければならない。
(2) 学校教育活動全体における指導の検討
道徳教育は、学校教育活動全体を通じて行うものであるが、道徳の指導と他の教育活動の指導を十分関連づけて指導していたとはいえない面があった。このような中で新しい道徳教育の実現を図っていくためには、児童生徒がより主体的にかかわり一人一人を生かした授業を目指し、教育活動全体と関連を図りながら道徳の時間の指導を行っていく必要がある。
(3) 各領域での指導の改善
各教科・特別活動で行われている道徳教育では、それぞれのねらいにそって活動が展開されるが、その過程において行われる道徳的価値の指導は十分とはいえないことが多い。
そこで、道徳として期待する学力を引き出すために、次の観点から検討する必要がある。
○ 各教科・特別活動のねらいと道徳教育のねらいとの関連が明らかになっているか。
○ 道徳の時間での補充・深化・統合が適切に行われるよう配慮されているか。
○ 道徳的実践の場が年間を通じて計画的・発展的に設けられているか。
二、道徳の時間の授業の工夫
(1) 指導過程を柔軟に考える
道徳の時間は「自己を見つめる時間」とも言われるが、道徳的価値の押し付けや表面的な指導になりがちである。また、指導過程の基本型による指導のくり返しは道徳教育の画一化にもつながる。これらの弊害に陥らないために、いかに児童生徒主体の授業を工夫していくかが求められる。
そのためには、次の点からの創意工夫が望まれる。
○ 価値の内面的自覚を図る指導過程を工夫したりして、「展開−導入