教育福島0178号(1994年(H06)04月)-013page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

学校と家庭地域との連携を深め心豊かな生徒を育てる道徳教育

 

−日常の生活体験活動を重視した指導を通して−

 

いわき市立平第三中学校

 

一、研究主題設定の理由

生徒の道徳性の特徴は、頭ではわかっているが、しかし、行動が伴わないという行動面での道徳性の未発達な生徒が多いことである。この原因についてはいろいろと考えられるが、「今まで体験・経験したことがない。」「今まで教えられ、躾られることがなかった。」などのことが学校生活や家庭生活を通してあげられる。さらに学校生活の中では、「為すことによって学ぶ」体験活動の不足が考えられる。

生徒が道徳性を身につけるのは日々の生活を通してであり、学校と地域社会という日常の生活圏全体が道徳教育の場といえる。また、「豊かな体験を通して内面に根ざした道徳性の育成」が求められていることを踏まえて、研究主題を設定した。

二、研究仮説と研究組織

生徒の課題、その課題の要因などから、課題を解決し「心豊かな生徒」を育てるために「道徳の時間の充実」、「体験活動の充実」、「学校と家庭地域との連携推進」のそれぞれに研究仮説を設定した。そして全体研修会、研究推進委員会を中心に「資料調査」、「体験活動」、「授業」、「学校・家庭連携推進」の四つの研究部を組織し研究を実践した。

三、研究実践の概要

1 体験活動の充実

生徒の道徳性の実態から学校生活や家庭生活の中で、基本的生活習慣の育成を基盤とした体験の場を意図的、計画的に設定し、指導援助を通して生徒の道徳性を高めた。

(一) 生徒会活動の中での体験

・リーダー講習会や全校挨拶運動

(二) 学級活動の中での体験

・一分間スピーチや班の活性化

(三) 集会・放送の時間での体験

・合唱集会や体験発表

(四) 掲示活動の中での体験

・道徳コーナーの設置や掲示コンクールの実施

(五) 清掃活動の中での体験

・清掃についての学級活動や全校クリーン作戦の実施

2 道徳的実践力を高める指導法の工夫について

(一) 資料の分析と活用

ねらいとする価値を明確にし、その価値に対する生徒の実態を把握したり、また、資料の中心人物の価値意識を十分に分析し、問題場面での発問を精選した。

(二) 指導過程の工夫

基本的な指導過程を設定し、体験活動や家庭との連携を指導過程の中に位置づけたり、資料提示や学習形態に工夫した。

(三) 発問の工夫

指導過程の各段階での基本発問を精選し、生徒の反応によっては補助発問を工夫した。また一問一答ではなく、多様な考え方や感じ方を引き出せるように工夫した。

3 学校と家庭地域との連携推進

(一) 広報計画と実践

「緑谷だより」として道徳だよりを発行。掲載内容は道徳に関するもの、学校や教師が家庭に働きかけるもの、「学年・学級だより」として、学年の月生活指針や情報、また学級の情報や道徳の時間の生徒の感想等を掲載した。

(二) 相互理解の計画と実践

家庭や地域の人々に学校の道徳教育についての理解・啓蒙を図るための「道徳授業の公開」、保護者も参加した「全校挨拶運動」、また「地区懇談会」や「親子奉仕作業」等を実施した。

4 研究の成果

(一) 道徳の時間を通し、いろいろな見方や考え方ができるようになり、自省しながら生き方について考える姿が見られ、また、教師自身も授業研究を通して基本的な指導法が身についてきた。

(二) 保護者の学校に対する関心も深まり、学校行事に参加することが多くなったり、触れ合う姿が見られるようになってきた。

 

全校クリーン作戦

全校クリーン作戦

 

四、今後の課題

1 個を生かすために生徒理解に努めるとともに、話し合いのできる雰囲気づくりや話し合いを意図的に取り入れ、ディベート活動を推進する。

2 自作資料の開発と体験活動が生かされる指導過程の充実を図るとともに、体験活動での指導のあり方については、評価の方法を考えながらさらに工夫、改善を図る。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。