教育福島0178号(1994年(H06)04月)-018page
養護教育センター通信
共同研究報告
養護教育におけるコンピュータ活用に関する研究(第3年次)
−養護教育におけるコンピュータ活用の実際(その1)−
一、はじめに
平成四年度までの研究により、コンピュータを養護教育で活用するためには、子どもに合わせた反応入力装置の開発が必要不可欠であることがわかりました。同時に、授業にコンピュータを利用するためには、学習目的や内容を十分考え、それに合ったソフトウェアを見つけ出したり、開発したりしていくことも重要であることがわかりました。
平成五年度は、これらを受けて、研究対象を肢体不自由教育から盲・聾・精神薄弱・病弱教育に広げ、コンピュータのCAIとしての活用を中心に、入力装置等の開発、活用の方法及びプログラムの作成や修正などを行い、それぞれの障害教育のニーズに応じたコンピュータ活用の可能性を探りました。併せて、肢体不自由教育の分野で、パケット通信を取り上げ、「生涯教育、交流教育に生かすコンピュータ活用」の可能性を探りました。
本号から二回にわたり、平成五年度に行われた研究の概要について述べていきます。
二、研究の方法(第三年次)
第三年次の目的に沿った実践研究を福島県立盲学校・聾学校・いわき養護学校・郡山養護学校・須賀川養護学校の五校の協力のもとに進めました。
研究紀要では十二事例についてまとめましたが、本誌では、そのうち七事例について、二回に分けて報告します。
三、研究の実践
(1) 視覚障害教育
【事例1】
点字タイプライターで点字を打つことはできるが触読が困難な盲児に点字学習への意欲を持続させるためにコンピュータを活用した事例
A児は、未熟児網膜症による先天盲児(左右光覚)で、軽い脳性まひを伴っています。
小学部二年生の後半から、手の操作性の指導も兼ねてパーキンスブレーラーを利用しましたが、キーを押す力も弱く、なかなか学習が進みませんでした。小学部三年生の二学期には五十音が打てるようになり、三学期にはパーキンスブレーラーを使用して単語や簡単な文章が打てるようになりました。しかし、点字の触読の学習では、十分読めるようにはなりませんでした。そのため、自分で打った点字を確認できず、「まちがっていない?」と先生に聞かなければなりません。
そこで、自分で打った点字を自分で確認できる方法としてコンピュータの活用を考えました。音声出力のためのソフトウェア及び出力装置は「AOK点字ワープロ」及びそのシステムを利用しました。入力装置については、点字の学習ということを考えるとともに、違和感を与えないため、パーキンスブレーラーから入力できる装置を開発しました。