教育福島0178号(1994年(H06)04月)-021page
随想
日々の想い
ずいそう
私の財産
齋藤善則
数多くの子供たちとの出会いは、私の心の中に貴重な財産として残っている。子供たちとともに悩み、悲しんだこと、笑顔でうれしさを分かちあったこと、今までよく知らなかった子供たち一人一人のよさや可能性が発見できたときの喜びと驚き、子供たちから学び、教えられたことなどすべてが宝物である。
私が、かつて担任したS男もその一人である。彼は、クラスの友達に対して思いやりに欠け、乱暴な言動でクラスに迷惑をかけることが多い子供であった。
S男の両親は離婚し、兄弟も離ればなれになり、帰宅しても母親の勤めの関係で一人でいることが多かった。彼の粗暴な言動は、こうした家庭環境が大きな要因の一つであると考え、愛情をもって接することが必要であると思った。
「おはよう」ということばかけに、S男は知らん顔。授業での個別指導にも、気の乗らない返事。清掃時に「ほうきの使い方がうまいね。」と言いながら近寄っていくと別な場所に移ってしまう。
私が一生懸命かかわりをもとうとすればする程、彼との心の距離はますます遠くなっていくように感じた。教育相談も実施してみたが、私を見る冷ややかな視線は一向に変わらなかった。意気込んでいた私は、このような状況に自信を失いかけた。それでも気を取り直し、今までしてきたことを続けようと決心した。
数週間後へあまり上手ではないが、提出されたS男の旦記帳に「さびしい」と書かれてあった。たった四文字ではあったが、彼の精一杯の意志表示であり、私を勇気づけたことばでもあった。
私は、以前にも増してS男に声をかけ、業間や昼休みの時間に一緒に汗を流して遊ぶなど、意図的・計画的にふれあいを深めた。彼の表情は日に日に明るくなり、教育相談の時も自分の悩みや考えを進んで話すようになり、学校生活を楽しむことができるようになった。
これでS男自身のすべての問題が解決したわけではないが、彼の成長を温かく見守っていきたいと思うとともに、教師と子供・子供同士の心のひびきあう学級づくりに努め、一人一人の子供を大切にしていきたいと思う。そして、私の心の中の財産を増やしていきたい。
(大熊町立大野小学校教諭)
図書館に勤めて
鈴木史穂
「『青春とは人生のある期間ではなく、心の持ちかたを言う。』という言葉ではじまる外国の詩の作者は誰ですか」
新採用になって一年が過ぎようとしている二月に受けたレファレンス(調査相談)での一コマである。
その瞬間、大学時代の恩師の言葉を思い出し、同時に、その『青春』という詩の作者、サムエル・ウルマンの名が閃いた。
大学時代に、何か一つ資格を取って卒業しようと、軽い気持ちで受講していた司書課程(当時は、将来的にこの資格の恩恵を受けようとは思ってもみなかった)の講義「図書館活動」の最初の言葉がこれであった。
「『青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方を言う。』これはサムエル・ウルマンの『青春』という詩の冒頭です。いくつになっても情熱を持ってがんばっていきましょう。」