教育福島0179号(1994年(H06)06月)-018page

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〔生徒指導〕

「人間としての在り方生き方」

福島県立清陵情報高等学校

 

一 研究主題

「人間としての在り方生き方」

副題二十一世紀に生きる生徒たちが、広い視野にたって、豊かな心を持ち、たくましく生きるための指導法の研究

 

二 主題設定にあたって

二十一世紀に生きる生徒たちの未来を展望するとき、彼らに人間としてどのような資質が求められるだろうか。

1) 地球環境の危機が叫ばれており、人類の生存の可能性すら危倶されている。また遠い地域で起こった戦争が、たちまち自国の食糧やエネルギーに影響してくる、というように世界は緊密に結びついている。

人間としての在り方生き方を考えるとき、従来のように個人、家庭、地域社会そして国家のレベルで考えるだけでは不十分である。もっとグローバルな視野に立って生きてゆける資質が求められるであろう。

2) 生徒たちは、物質的な豊かさの中で便利で快適で効率的なサービス社会に生きている。しかし、精神的には決して充実した幸福な生活をしているとは言えない。経済を優先するあまり調和や平衡の感覚を失い、愛や情熱や感性が萎縮しているのではないだろうか。これまでの物質至上主義や利己主義を捨て、心の豊かさへの価値観の転換を図り、豊かな心をもって生きられる資質が求められるであろう。

3)生徒たちは、努力して障害を克服する喜びを感じられなくなったり、わずかの不快刺激にも耐えられないというように、心身ともに虚弱化しているとも言われている。二十一世紀に向け、未来に横たわる課題を主体的に解決し、幸福を追求していくためには、心身のたくましさが伴わなければならないであろう。

今回の高等学校学習指導要領の改訂により、『人間としての在り方生き方』に関する教育が大きく取り上げられた。私たちはこの『人間としての在り方生き方』に関する教育は道徳教育よりも包括的な概念であるととらえ、上記のような観点から、人生観、世界観、自然観などに関して、内面的な資質を育てながら、実践的な行動力を身に付けさせたいと考え本主題を設定した。

 

三 研究内容及び方法

(1) 研究の内容

1)広い視野をもって生きるための現状分析及び求められる要件と、その指導法の研究

2)豊かな心をもって生きるための現状分析及び求められる要件と、その指導法の研究

3)たくましく生きるための現状分析及び求められる要件と、その指導法の研究

(2) 研究の方法

1)教育活動全体を通じて

2)知的・情操的・肉体的・体験的・技術的な側面から

3)生徒が主体的に学び、身に付ける力を育成することに配慮して研究を進める。

※研究にあたって

本校には、これまでの校歌のイメージを一新した斬新な校歌がある。

この校歌には二十一世紀に生きる生徒たちの在り方生き方を考えるとき、考慮すべき全ての要件が含まれている。すなわち

「何のために人間はいるのか」

「何のために世界はあるのか」

「何のために地球はあるのか」である。この校歌から「人間」・「世界」・「地球」の3本の柱を立て、

a「人間」では「物質から心へ」(校歌の「激しい愛」)

b「世界」では「競争から連帯へ」(校歌の「熱い祈り」)

c「地球」では「略奪から共生へ」(校歌の「美しい夢」)

をキーワードとして委員会を設定し、研究を進めた。

 

四 研究の組織

(図1参照)

 

五 研究仮説

(1) 人間委員会

二十一世紀に生きる彼らが、心豊かに、たくましく生きていくための資質を育むために、仮説を次のように設定した。

1) 「外見=内面」であることをわからせるために自分の内面を省みるゆとり(時間)を持たせる。そのために、まずそのような時間を持つべきであることを自分で気付かせるための体験をさせることにより、心の豊かさが育まれるであろう。

2)礼儀作法は、他の社会と関わりを持つ場合に必要なものである。礼儀作法を教えるべき家庭が核家族化し、こじんまりした社会(家父長制の崩壊や親の権威の失墜)になっていることにより、礼儀作法の必要性を家庭では感じなくなっている。現在自分が関わっている社会と別の社会との出会いの機会を設けることに

 

 

 


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