教育福島0179号(1994年(H06)06月)-043page

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に、パケット用反応入力装置を作製しました。その結果、自分から積極的にパケット通信に取り組む姿勢が見られるようになりました。

また、D男とE男は、地域の人と積極的に交信し、情報の交換や交流を行っています。このように、パケツト通信の活用により、同じ趣味をもっている地域の人との交流が深まり、肢体不自由児(者)の生活経験がさらに広がるものと期待できます。

 

注 パケット通信データを伝送する通信方法の一つ。本研究では、アマチュア無線を使ったパケット通信を実践した。

 

(2) 病弱教育

【事例7】

心身症(登校拒否)の中学部生徒が、コンピュータ活用による対人関係の改善及び主体的学習への発展を目指した事例

 

近年の病弱教育は慢性疾患の減少により少人数化、重複化、心身症の増加と様変わりをしています。実際、研究協力校の中学部は7名中、4名が登校拒否の生徒となっています。

これらの生徒に対するコンピュータ活用のねらいとしては、次の二点があげられます。

1) コンピュータゲームを媒介として、抵抗のある学校や教師に対する不安傾向の軽減を図りながら、ラポートづくりをするとともに、段階的に個別から小集団へと対人関係の拡大を図る。

2) 本人の気持ちを十分認め、主体的にソフトウェアを選んで学習に取り組めるようにし、意欲の喚起と自己操作による満足感や充実感を味わうことができるようにする。

実践を通して次の二つのことがいえます。

一つは、コンピュータは、本人自身のペースで操作できるので、登校拒否の子ども達にとって、その場の状況や、教師に対しての威圧感を感じることなく、興味をもって主体的に取り組めるものだということです。

今回は、教師が静かに見守り、共に笑い、悔しがり競い合うことから、教師との信頼関係を生徒自身が再構築でき、登校の楽しみをもつことができたようです。

二つ目は、学習空白の改善に関してです。学習空白は、治療、入院を繰り返す病弱児にとって避けて通れない大きな問題です。学習空白は、入院の時期や治療の期間によって学習進度の差があり、個別的な指導が必要となります。

また、学習空白を原因とする学習意欲の衰退、自信の喪失などが重なっている状況にありますので、学習意欲の向上、自信の回復等を目指し、本人の個別的な学習内容が効率的にできる環境が必要となります。

今回のコンピュータのCAI活用は、生徒たちの体験の少なさを補い、学習空白を補充する手段として、特に有効であったと思われます。

 

三、今後の課題

各障害ごとにコンピュータ活用の多くの有効性を実証することができましたが、同時に今後解決すべき多くの課題も明らかになりました。(表1)

当センターでは今後とも、右記の課題解決のために努力していきたいと考えています。

四、おわりに

本研究を通して、コンピュータは、活用目的を明確にし、それぞれの障害に応じた入力装置、出力装置等を工夫・開発すれば、さまざまな面で有効であることが実証されました。

コンピュータの活用によって、それぞれの障害の補償や代行が可能になりますが、コンピュータを有効に活用するためには、学習や生活上の基本的能力が基礎となることを忘れてはなりません。コンピュータの活用が、障害児の能力を伸ばす上で、マイナスになってはならないのです。

 

表1 コンピュータ有効活用のための課題

 

1) 学校全体でココンピュータ活用を日指すことの必要性

2) 豊富なソフトウェアの蓄積とその情報提供の場 流通経路の確保

3) 障害の種別を問わず 個に応じた周辺機器等の改良 工夫の必要性

4) 一般の小・中学校、高等学校におけるコンピュータのCA1活用に関する実践の情報収集

 

 

 


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