教育福島0180号(1994年(H06)07月)-031page

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3 幼稚園教育の基本

幼稚園は、一人一人の幼児がよさや可能性を発揮して楽しく充実した生活を展開する場でなければならない。幼稚園教育は、幼児の生活の自然な流れの中で、周囲の環境に自ら興味を持ってかかわり、様々な活動を展開する中で得る直接的な体験を積み重ねてすすめられる。

今、学校教育は、生涯学習の基盤を培うという立場に立ち、二十一世紀を目指し社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図ることを基本的なねらいとして進められている。学校教育の出発点としての幼稚園教育でも、一人一人が自分らしさを発揮して、意欲をもって取り組む主体的態度や思考力・判断力・表現力などを育てるための基礎づくりの時期であることを踏まえてその教育の在り方を考える必要がある。

幼稚園での教育は、幼稚園生活を通して一人一人の幼児が発達に必要な経験を自ら獲得していくように援助することである。一人一人の育ちをどう援助するかを考えたい。

 

4 指導の充実

幼児が環境にかかわり、主体的な遊びを通して健全な自立を促し、集団生活の中で人間に対する信頼感、物事への興味・関心運動能力の基礎となる力を養うために、発達の特性を捉え、直接体験を充実させる指導法の工夫に努めなければならない。一人一人の幼児が充実した日々を送り、遊びを通して経験を積み、心の世界を広げ、考え、挫折や葛藤を自分の力で乗り越えていけるような場と機会が得られるように、生活の流れを大事にし、多様に変化しながら展開する保育をしなければならない。

(1) 一人一人を理解する

個々の生活の流れを思い起こすことによってその姿を理解することができる。日々の保育記録により意識化し、活動のみに目を奪われる事なく幼児の中に育っているものを見極め育とうとしているものを見つめる努力をすることが大切である。

(2) 一人一人のよさを認め生かす

一人一人の幼児がどのような発達の流れの中で今の生活・活動に取り組んでいるのかを捉え、その流れをしっかりと歩んでいけるようにしてやることが大切である。

発達する姿がそれぞれ違っていて興味や関心のもち方も違っている幼児に対して、画一的な指導が行われれば、その幼児にとっての大事な経験の機会が失われ、意欲も失わせてしまうことになりかねない。幼児一人一人のその子らしさ、特性を十分理解し、その子のよさが十分に発揮できるような状況を作り出していくことが、一人一人の子どもを生かす援助につながっていく。

(3) 共感的な理解

(カウンセリングマインド)

幼児は自分が誰かに受けとめられ見守られているという安定感の上に立って、自分の活動を広げ周囲に働きかけながら自己を形成していく。一人一人をかけがえのない存在として認め、温かく見守ることから一人一人を生かすことが始まるが、温かく見守るということは、幼児を信頼し期待をもってかかわることであり、教師は一人一人の心の動きに敏感に応え、生活を共にしながら幼児の思いを感じとっていくことが大切である。

幼児を共感的に理解し、主体性を大切にすることは、放任することではない。教師がどのようなかかわり方をしているかも振り返ってみる必要がある。

(4) 家庭・地域との連携

保育の場を地域に広げ、自然や文化、人材を環境に取り入れ、人々の生活にふれる機会を設けることや幼稚園を親子の触れ合いや交流の場、地域の幼児教育のセンター的役割を担うことも必要になってくる。

また、小学校との連携が図れるような機会を設け、発達の連続性を踏まえた教育となるようにしなければならない。どのような場合でも、「幼児にとって何が必要か。何が大事か。」を考えながらすすめたい。

 

 

 

 

 


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