教育福島0181号(1994年(H06)09月)-007page
提言
一九六六年文化財保護委員会記念物課技官
一九六九年宮城県多賀城跡調査研究所所長
一九七六年文化庁国立歴史民俗博物館設立準備室教授
現在国立歴史民俗博物館教授、同考古研究部長
〔主たる著書〕
一九六二年『平城宮跡発掘調査報告2)』奈良国立文化財研究所
一九六三年『平城宮跡発掘調査報告3)』奈良国立文化財研究所
一九六五年「縄文文化の発展と地域−近畿」『日本の考古学H縄文時代』所収
一九七四年「多賀城周辺の古代杯形土器の変遷」『宮城県多賀城跡調査研究所紀要1』所収
一九七七年「多賀城跡』中央公論社一九七八年「東北日本における古代城棚の外郭施設」『自然と文化』所収
一九八二年「東北の城棚」『日本歴史地図』所収他多数
博物館を学校教育で活用してもらうことはどこの博物館でも意図することであり、福島県立博物館では五年前に「小学校における博物館学習指導の手引き」を出版しており、私の奉職する国立歴史民俗博物館でも小学校高学年から中学生を対象として「日本歴史探険(れきはく案内)」四冊を出版している。
しかし、現実の学校教育における博物館利用の姿を見ると、各学年の児童・生徒が全員で年一回参観するケースが多い。引率されて来た生徒達も「何をどのように見れば良いか」指導されていないため、遊びのつもりで漫然と眺めてしまうようである。参観後のレポート提出を課している学校も多いが、このため生徒達は展示説明文の筆写に時間を取られて、展示物を観る余裕がない。折角、博物館を利用しながら、あまり教育効果があがらないのは残念なことである。
博物館の展示は、いかに精密に構成されていても、観客にとっては知的資料、教育にとっては教材にすぎない。展示という教材を使って教育を行うには、当然教師が必要になるはずである。欧米の博物館のように博物館自体に各教育課程に応じたミュージアム・ティーチャーを置くことも必要であるが、同時に生徒達を引率される教師の方々が、授業の一環として展示を教材として臨地教育を行っていただきたいものである。
国立歴史民俗博物館の研究室にて
提言