教育福島0181号(1994年(H06)09月)-035page

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教育ひとロメモ

福島県養護教育センター

LD(学習障害)

−その指導にあたって−

 

一、まじめに

知的な発達に関しては、特に遅れがみられず、普通かそれ以上でありながら、読み、書き、算数など学習の一部に知的水準と大きな隔たりがみられる、いわゆるLD(学習障害)児の特性については、本紙VOL.152(平成2年度1月号一で解説しました。今回は、LD児への指導の基本的なことがらについて概略を説明します。

 

二、指導をはじめる前に

LDは、認知の発達にかかわる学習領域のさまざまな部分の特異的発達障害を総称する概念とされています。ですから、一人一人の子どもの特性や課題となるべき部分が異なっています。まず、そのことを基本において、一人一人の課題を明らかにし、それぞれに適した指導目標、内容、方法を考えていくことが大切です。

(1) 課題がLDに基づくものか確認LD児が示す特性は、他の障害や環境からの影響などによって起きる特性と重複する部分があります。ですから、指導を始める前に、子どもの示す特性や課題がLDに基づくものかどうか確認しなければなりません。その手順は次のとおりです。

1) 学習状態や日常生活行動等の観察から子どもの特性を把握する。

2) 子どもの特性が、知的な遅れから起きているのか、感覚器官や運動機能の障害から起きているのか、情緒的な障害や環境上の問題から起きているのか検討する。

3) LDと確認できたら、現在の課題が一次的課題のうちのどの部分か、あるいは二次的に起きている課題なのか等を検討する。

(2) LD児の主な課題

LDは、特異的な発達障害を総称する概念だということは前に述べました。ですから、それぞれの子どもの発達課題が異なるとともに、子どもの成長にともなった課題の変化やおかれた環境による課題の変化も考える必要があります。幼児期の運動やコミュニケーション、学齢期の学習、成年期の社会的能力等をそれぞれの時期の中心的な発達課題と考える立場もあります。

 

図1 LD児の主な課題

図1 LD児の主な課題

 

三、指導にあたって

LD児は、その特性から通常の指導方法では十分に力を発揮することができない場合があります。そのため、子どもに応じた指導方法を工夫していく必要があります。また、対人関係や集団生活の場、学習をする上で失敗や挫折をすることが多く、二次的に自信を失ったり、意欲を失ったりすることも考えられます。

指導にあたっては、次のような点に配慮してみるとよいでしょう。

(1) 二次的に自信や意欲を失っている場合には、子どもの得意な分野などを認めることとともに、できることやできかかっていることを課題として与える。

(2) 成就体験を増やすために、援助の種類、量、タイミング等を検討する。

(3) 発達の遅れの部分への指導方法を工夫するとともに、遅れのない部分を利用した指導も検討する。

(4) 指導目標、内容等に応じ、指導の場の検討をする。

 

四、おわりに

日本においては、教育の中でLDが話題となり始めてから日が浅いため、その指導方法が確立されているとはいえません。現在、文部省の委託を受けて、国立特殊教育総合研究所で研究が進められています。また、LD学会の発足や親の会の活動等、さまざまな取り組みがなされています。

一人一人の子どもが、社会で力を発揮できるよう、その成果が期待されます。

 

 

 


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