教育福島0181号(1994年(H06)09月)-036page

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護教育センター通信

障害のある子供の

理解のために

−聴覚障害−

 

はじめに

三重苦のヘレン・ケラーが、ある人に「神様から、その『見えない』、『聞こえない』、『話せない』のうち、一つだけ直してくれるといったら、どれをとりますか?」と尋ねられたとき、迷わず「聞こえない(聴覚)」と答えたそうです。その理由として、「耳が聞こえないことは、言葉を伝え、思考を促し、我々の知的な人間関係を保つ『声』という『音』を失うことを意味するからだ。」と説明したそうです。

このエピソードは、聴覚障害(聞こえを失うこと)がいかに深刻なことか、つまり「聞こえ」を通したコミュニケーションがいかに大切なものかをよく表わしています。今回は、このような「聞こえ」に障害のある子供へのかかわり手に必要な配慮や対応の仕方について考えてみます。

 

一、聴覚障害とは

世界保健機構(WHO)の障害の分類によって説明しますと、「聴覚障害とは、聴覚伝導経路になんらかの損傷があることによって、音声を伝達することに機能的制限を受け、そのため言語獲得が困難になりやすく、コミュニケーションが不自由で社会的な不利を負うことが多い。」と言うことができます。つまり、聴覚障害というのは、単に音が入らないとか入りにくいというだけの障害ではないと考えるべきなのです。

 

二、聴覚障害の分類

聴覚障害は、起こった時期や部位、聴力レベルの程度などによって分類の仕方が違ってきます。

(1) 起こった時期や部位による分類聴覚障害は、起こった時期により、先天性と後天性とに分けられています。また、障害された部位により、伝音性難聴、感音性難聴、そして、両方の合併した混合性難聴とに分けられ、障害の部位によって、聞こえの状態が異なります。伝音性難聴では、単に音が小さくなるだけですが、感音性難聴では小さく聞こえるだけでなく、音が歪んで聞こえます。

(図1)

(2) 聴力レベルの程度による分類

聴力障害には、かすかな音や言葉を聞きとるのに不自由があるが、日常生活上ほとんど支障がない程度から、生活の中でのいろいろな音や言葉が全く聞こえない程度まであり、その程度によって一般には軽度、中等度、高度難聴及び聾に分けられています。聴力レベルの単位はdB(デシベル)が用いられ、数字が大きいほど障害の程度が重いことを表わしています。

どのような型の聴力障害であれ、極端な場合を除いて、全く聞こえないということはほとんどありません。しかし、その聞こえ方が健聴の場合と異なりますので、保有聴力を活用するためには、適切な補聴器をつけるだけでなく、特別の訓練や配慮が必要になります。

 

図1 聞こえのしくみ

図1 聞こえのしくみ

 

 

 


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