教育福島0184号(1995年(H07)01月)-022page
自己を見つめ、心豊かなたくましい児童を育てる道徳教育
−−道徳の時間の指導を中心とした総合道徳学習の取り組みを適して−−
檜枝岐村立檜枝岐小学校
一、研究主題設定の理由
(1) 新しい学力観と道徳教育の課題から
これからの学校教育においては、社会の変化に対応して子供たちが心豊かに主体的に、創造的に生きていくことができる資質や能力の育成を図ることが求められている。つまり子供のよさや可能性を生かすことを根底に据え、自ら学ぶ意欲と思考力、判断力、表現力などの能力の育成を重視する新しい学力観に立った教育を展開していく必要がある。道徳の時間の指導についても同様の考えに立って進めていく必要がある。
今までの道徳教育は、学校教育活動全体を通じて行うものとされているが、現実には他の教育活動の指導と道徳の指導を十分関連づけて指導していたとは言えないところがあった。このような中、新しい道徳教育の実現を図っていくためには、子供がより主体的にかかわり一人一人を生かした授業を目指し、総合的な学習全体の中で道徳の時間の指導を行っていく必要がある。
(2) 教育目標の具現化から
本校では、「進んで勉強する子」「思いやりのある子」「健康な子」「最後までやりぬく子」の四つの教育目標のもとに、心豊かな人間性を持つ児童の育成を目指し、重点目標を設定した。これからの目標を達成するためには、道徳の時間において、児童が自ら課題を持ち、思考力・判断力・表現力などを十分発揮しながら、主体的に学習する活動を展開し一人一人に内的な力(自己を見つめる力)を育て道徳的実践力を高めていく必要がある。
(3) 地域・学校・児童の実態
本校は、児童数45名のへき地小規模校である。児童は明るく素直であり、人懐っこく、誰にでも親切である。また、下校時に進んでゴミを拾うなど、村を大切にしょうとしている。しかし、明るく素直な反面、恥ずかしがり屋の一面も見られ道徳の時間や諸活動などにおいて自分から主体的に取り組もうとする姿は少ないように感じられる。
(4) 道徳の授業の反省から
1)児童が、主体的に授業に参加しようとする意欲や欲求を持ち、興味・関心を高める指導の工夫が十分でなかった。
2)少人数学級及び学年差などの本校の実態に応じた指導が不十分であった。
3)他の価値観への主体的なかかわりが少なく、他の価値観との比較やそれを通しての自己の振り返りが少なかった。
4)週一単位時間しかない道徳の時間の指導が、その時間だけの価値の追求に終始し、各教科や特別活動などにおける道徳教育とどのようにかかわり合い関連しているのかとらえていなかった。そのため、本当の意味での全教育活動を通しての道徳教育となっていない面が見られた。
以上のような理由により、これまでの本校の道徳の時間の指導のあり方や他の教育活動と道徳の時間の関連を見直し、より児童が主体的にかかわる総合的な道徳学習を目指し、心豊かなたくましい児童の育成のため、本研究主題を設定した。
二、研究の見通し
1) 仮説
道徳の時間の指導を中心とし、他の教育活動における道徳教育との関連を図った「総合道徳学習」を計画し実践していけば児童主体の道徳学習へと近づき、今まで以上に道徳の時間に主体的にかかわる児童が育つてあろう。
(2) 仮説のための理論
1)総合道徳学習のとらえ方
道徳教育は、各教科等の全教育活動でそれぞれの特質に応じて行われる。道徳の時間は、それらと関連を図りながら指導されることから必然