教育福島0186号(1995年(H07)04月)-013page
ようにするため、次の観点から検討してみる必要がある。
〇 各教科、特別活動のねらいと道徳教育のねらいとの関連が明らかになっているか。
〇 道徳の時間の中で、多様な道徳的価値観にふれ、真剣に自分自身を見つめる場があるか。
〇 道徳的実践の場が、年間を通じて計面的・発展的に設けられているか。
二、道徳の時間の指導の工夫
(1) 指導過程を柔軟に考える
道徳の時間は、自己の内面と向き合い自己を見つめることが大切になるが、ともすれば、資料の読み取りや道徳的価値を理解させることに終始するなど表面的な指導になりがちである。また、画一的な指導の繰り返しは、子供たちの授業への興味関心を弱めることにもなりかねない。これらの弊害に陥らないようにするためには、次の観点から授業を見直し、創意工夫していくことが求められる。
〇 価値の内面的自覚を図る指導の過程を十分に理解するとともに、指導を「展開−導入−終末」の順序で構想してみるなど、各段階でのねらいや時間を考慮した柔軟な授業作りに努める。
〇 意識調査や道徳的実践の意欲づけなど指導過程の一部を事前、事後の指導や他の教育活動と関連づけるなど弾力的に取り組む。
〇 一つの内容項目に関連する主題を一つの単元のようなとらえ方をし、教科学習や特別活動での学習、日常の生活との関連を図りながら児童生徒一人一人の実践意欲に結びつくよう工夫する。
(2) 多様な指導方法を工夫する。
児童生徒の側に立った道徳の授業を展開していくには、まず、よさを認め励まし伸ばす指導を充実させていくことが大切になる。さらに、興味・関心や意欲を高め、児童生徒自身の感じたことや考えたことを自発的に伸び伸びと発表させたり表現させたりすることができる学習活動を吟味し、取り入れていくことが望まれる。
〇 先行オーガナイザー法(県教育センターの研究成果による)など資料に抽かれている道徳的問題や課題に豊かに反応する資料提示の工夫
〇 場面絵の活用や構造的、視覚的板書など資料の場面状況を構造的に把握させる工夫
〇 児童生徒の道徳的価値観をゆさぶり、多様な価値観を引き出す発問の工夫
〇 意図的指名、相互指名など各段階のねらいに沿った指名の工夫
〇 パネルディスカッションやディベートなど児童生徒が意欲をもって取り組める話し合い活動の導入
三、豊かな体験の場の設定
学校教育全体で実践される豊かな体験活動は、それぞれに独自のねらいをもっている。それらのねらいを道徳との価値内容とのかかわりで捉え直しておくことは、一人一人のよさや可能性を育てる上で重要になる。体験活動の中で、道徳的課題が浮彫りにされたり、道徳的実践がより自然な形で行われたりするからである。
〇 道徳の価値内容の四つの視点と体験活動の関連を見直した場合、よさや可能性を発揮する場や機会が確保されているか。
〇 教師と児童生徒との尊敬と信頼関係を基盤に、児童生徒相互の認め、励まし、助け、学び合う場と機会が積極的に設けられているか。
〇 豊かな人間関係を基盤とした様々な学習活動や体験活動の中で学級や集団のために働く場や機会があるか。
〇 学校や学級の支持的風土の中で、他を思いやる機会はあるか。
〇 道徳的な環境や自然環境、人間関係の中で感動する場や機会があるか。